西日本豪雨の被災家屋で浸水の痕跡を調べる森脇さん(中央)ら=12日、倉敷市真備町岡田
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 西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた倉敷市真備町地区の住民らが、水害の実態を後世に伝えるための活動を始めた。河川の堤防決壊で民家に押し寄せた濁流の痕跡を調べたり、被災当時の状況を住民に聞き取ったりする。結果を踏まえて提言をまとめるなどし、同様の災害が起きた際に被害を最小限に食い止める一助にしたい考えだ。

 自宅1階が天井近くまで水に漬かった森脇敏さん(77)=同町地区=が「水害の記憶を風化させてはならない」と、賛同する住民と3人で8月下旬、活動グループを結成。浸水した地区にある建物の痕跡から当時の水位を調べており、今後は被災時刻や避難状況など住民の証言も集めていく。

 12日には、取り組みを知って協力を申し出た岡山大教育学部4年丸山雄大さん(23)と一緒に同町岡田を歩き、民家の壁や土蔵で確認した水位を地図に記していった。

 郷土史に詳しい森脇さんによると、真備町地区は過去に何度も洪水に見舞われたことが文献などから分かる。江戸時代には藩主が水害を恐れて屋敷を高台に移し、集落の周囲に土手が築かれたとされる。「先祖は知恵を絞り対策を講じてきたが、時代とともに忘れられてしまった」と、森脇さんは豪雨での甚大な被害に心を痛めたという。

 活動メンバーの片岡展弘さん(65)=同町地区=も「災害を通じ、真備で生まれた自分にできることは何かを問われている気がした。記録を残すことが使命だと思う」と言う。

 森脇さんが長年かけて集めた歴史資料が豪雨時の浸水で失われた経験を踏まえ、メンバーは調査記録を提言に収めるだけでなく、水害の記憶が確実に受け継がれるよう水位などを刻んだ石碑を建てる構想も温めている。地域の学校に防災教育の必要を訴える活動も進めたいという。

 活動に協力する岡山大大学院の松多信尚教授(地理学)は「地元の住民ならではの人脈や土地にまつわる知識を生かしつつ、後世の人が豪雨災害について検証できるような記録にすることが大切。その過程で、今後何を継承すべきかが見えてくるはず」と話している。

山陽新聞 2018年10月23日 10時40分
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