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http://repository.seinan-gu.ac.jp/bitstream/handle/123456789/833/lr-n43v3_4-p1-179-nis.pdf?sequence=1&;isAllowed=y
5 1項後段に基づく損害賠償請求訴訟において留意すべき事項
(1) これが必要的共同訴訟でないことは明らかであるから,原告は,「共同行
為者」の全員を常に同時に被告として訴訟を提起しなければならないわけでは
ない。しかし,「共同行為者」のうちの一部の者だけを被告にした訴訟では,
被告側の「自己の行為と結果との間に因果関係がない」という点についての立
証の成否次第では,原告の請求が棄却されるおそれもないとは言えない。しか
も,右訴訟において原告が敗訴した後に提起した残りの「共同行為者」に対す
る訴訟も又同じ運命を辿る危険性を完全に否定しさることもできないのである。
そうだとすれば,原告としては,可能な限り,「共同行為者」の全員を被告と
して訴訟を提起するに如くはないことになる。
(2) また,「共同行為者」のうちの一部の者だけを被告にした訴訟では,前記
のような被告の応訴態度は,反射的には,結果の発生は専ら被告とされなかっ
た「共同行為者」の責任であることを主張立証することにほかならないから,
判決の事実上の拘束力を併せ考慮するならば,これによって被告とされなかっ
た「共同行為者」の立場も又著しく不利なものとされるおそれがあるものと言
わなければならない。
しかも,「共同行為者」の全員を被告とする訴訟によれば,前記のように複
数の訴訟が提起された場合に生ずる可能性のある各判決の矛盾や齟齬といった
事態もおよそ心配する必要がないのである。
(3) そうすると,1項後段の構成による訴訟は,あらゆる意味で,「共同行為
者」の全員を被告として提起するのが望ましいものということができる。