米オレゴン州ポートランドで行われた極右主催のデモで、反オルト・ライト活動家(右)とにらみ合うオルト・ライトの支持者(左、2018年8月4日撮影)
http://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/0/8/-/img_0840726d5e54584f168c43e0a58c3697294471.jpg

【11月3日 AFP】米東部ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)で10月27日に発生し、11人の犠牲者を出した銃乱射事件をきっかけに、米社会における人種差別主義、ネオナチ、反ユダヤ主義に注意の目が向けられている。また、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の存在が、このような事件の引き金になっているとの意見をめぐっても激しい議論が巻き起こっている。

■米極右とは?

 極右やネオナチは米社会に長年存在しているが、文化の主流からは常に外れた存在だった。

 しかし、2001年9月11日の米同時多発攻撃で反イスラム主義が盛り上がったのをきっかけに、極右勢力は力を増した。そして、2010年に白人至上主義者で右派勢力のリチャード・スペンサー(Richard Spencer)氏がウェブサイト「オルタナティブライト(AlternativeRight)」を立ち上げると、その勢いはさらに強まった。

 新極右勢力「オルト・ライト(オルタナ右翼)」が掲げるのは主に、白人至上主義と男性優位の考えだ。移民による人種的・文化的脅威を訴え、真のナショナリズムの確立を呼びかける。反ユダヤ主義者でもあるスペンサー氏は、欧州系米国人の地位とアイデンティティー、そして未来に対して、自身が多大な貢献をしていると喧伝しており、こうした同氏の活動が、ネオナチにこれまで以上の正当性を与えることとなった。

 極右勢力は主要メディアから締め出されていたため、彼らは、その理念を検閲しないウェブサイトやソーシャルメディアに集まり、コミュニティーを形成していった。利用したのは、ネット掲示板「4chan」、ソーシャルニュースサイト「レディット(Reddit)」、ソーシャルメディア「Gab(ギャブ)」などだ。

 トランプ氏の元側近で首席戦略官・上級顧問を努めたスティーブ・バノン(Steve Bannon)氏は政権に入る前、超保守系ニュースサイト「ブライトバート・ニュース(Breitbart News)」のトップを務めていた。同氏の下でブライトバートは、極右に関するすべてを発信するハブと化し、オルト・ライトは急激に注目を集める存在となっていった。

■ピッツバーグ銃乱射事件の容疑者と極右の関係

※省略

■拡大するオルト・ライト

 トランプ氏が2015年に大統領選に出馬し、バノン氏とブライトバート・ニュースがそれを支持すると、オルト・ライトへの注目度は一気に増した。

 2016年の大統領選でトランプ氏が反移民主義を掲げ、「アメリカ・ファースト」を訴えると、それは大きな共感を呼び、オルト・ライトの白人至上主義者たちの支持を集めた。

 オルト・ライトに共感する人の正確な人数を把握することは難しい。専門家は、トランプ氏が大統領に就任した2017年1月には、極右の団体で活動する人の数は数万人になっていたと話す。ただ、表に出てこない潜在的な支持者の数は数十万人に上るとされ、彼らの多くはインターネットでつながっているという。

 極右団体を監視する「ポリティカル・リサーチ・アソシエイツ(Political Research Associates)」のスペンサー・サンシャイン(Spencer Sunshine)氏は、昨年の取材で、「彼らは現在、協力して活動している」と指摘し、「トランプ氏支持者らの中に存在する人種主義的側面が盛り上がりをみせ、彼らの活動も活発化している」と続けた。

■白人至上主義のデモ

※省略

■トランプ氏の立場は?

 トランプ氏の長女イヴァンカ(Ivanka Trump)氏とその夫ジャレッド・クシュナー(Jared Kushner)氏はユダヤ教徒で、トランプ氏はたびたび反ユダヤ主義を強く非難してきた。

 だが、オルト・ライトに対するトランプ氏の態度は、反ユダヤ主義に対する態度に比べてあいまいに見える。

 シャーロッツビルで事件が発生した後、トランプ氏は48時間もコメントを出さなかった。その後に出されたコメントは、ネオナチが暴力を引き起こした多くの証拠があるにもかかわらず、「両者」を非難するにとどまった。

 この中でトランプ氏は「双方に非常に素晴らしい人々がいる」と述べたが、こうしたコメントがオルト・ライトに力を与えているとする批判の声も上がった。

 批判を受けたトランプ陣営は、大統領は憎しみをあおってなどいないと反発し、「怒り」と分断をあおる「いいかげんな」マスメディアにこそ責任があると語気を強めた。

2018年11月3日 10:00
http://www.afpbb.com/articles/-/3195201