9月に猛威をふるった台風21号は、近畿圏を直撃して2カ月が過ぎた。このうち大阪府内では少なくとも信号機730基が消え、交通に混乱が生じた。
大規模災害などで停電した際の備えとして、信号機に非常用電源装置を設ける手法があるが全国的に低調で、同府内では整備率はわずか2・6%にとどまる。

さらに、府内で整備されているものの多くは平成7年の阪神大震災後に設置されたため老朽化が目立つ。
だが、コストが高く新設が難しいのが現状だ。

台風21号の直撃から一夜明けた9月5日朝、同府泉南市新家。電柱9本が倒壊し、道路をふさぐなどの被害に見舞われていた。
多くの信号機が消え、交差点では車が譲り合いながら進み、至る所で渋滞が発生。

やがて警察官が到着し、交差点の中心などに立ち、手旗信号と笛で車を誘導し、次第に渋滞は解消された。
同所のように、台風21号では関西電力管内(2府6県)で約1400本の電柱が損壊するなどし、延べ約219万戸に及ぶ大規模な停電が起きた。

このうち大阪府警交通規制課によると、府内では信号機約5千基が曲がるなどし、うち少なくとも730基の信号が消灯。
警察官らが交通整理で対応したが、すべてをカバーすることはできなかった。

府警がすべての信号の復旧を確認したのは9月12日午後6時ごろ。
大きな交通事故はなかったが、府警幹部は「非常用電源を備えた信号機が普及していれば、ここまで被害は広がらなかった」と話す。

信号機に付ける非常用電源装置は、軽油などの燃料で動く「自動起動式」や「リチウムイオン電池式」などのタイプがある。
同課によると、29年末時点で府内の信号機1万2314基のうち、非常用電源装置付きは325基にとどまる。

普及が進まない最大の理由はコスト面だ。
形式によるが、非常用電源装置は1台あたり200万円前後。
府内では阪神大震災後、幹線道路など交通量の多い交差点への普及が始まったが、府の財政状況などもあり、そのほかの場所では整備が進んでいない。

一方、今年6月の大阪北部地震では、非常用電源装置付きでも消えた信号があった。
老朽化が原因とみられる。非常用電源装置は、こうした既存設備の交換が優先されているため、新規設置が進んでいない実情もあるという。

府警幹部は「ここまで大きな被害はこれまでになかった。
今回は幸い大きな交通事故はなかったが、今後の大規模災害に備え、少しでも非常用電源装置を整備していきたい」と話している。

https://www.sankei.com/smp/west/news/181105/wst1811050040-s1.html