外国人労働者の受け入れ拡大に向け、2日に関連法案が閣議決定された新たな在留資格制度について、現場からは「来年4月からの導入は拙速だ」との批判が出ている。特に不安の声が強いのが、外国人の労働環境や人権を守るための仕組みが不明確なことだ。現行の外国人技能実習制度では、国から許可を得た「監理団体」が、受け入れ企業への定期的な監査などを行いチェック機能を果たしている。新制度にもこうした仕組みがなければ、不正が野放しになりかねない。

【図解】どう変わる?新たな制度案
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「外国人にはさまざまな困り事がある。きめ細かく見守らないと、トラブルにつながってしまう」。こう話すのは、技能実習制度の監理団体として許可を受け、約千人の外国人を受け入れている「福岡情報ビジネス」(福岡市中央区)の藤村勲代表理事。
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同社は、実習生が来日すると1カ月間、全寮制の施設で日本語やごみの分別ルールなどを教育。約20人の担当社員は、実習先の企業約70社を毎月最低1回は訪問し、違法な長時間労働などが行われていないかを確認する。3カ月に1回は監査も行う。

体調不良の実習生がいれば通訳とともに担当社員が病院に同行。誕生日を迎える実習生には必ずお菓子を持ってお祝いに行くことにしており、涙を流して喜ばれることもあるという。
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■後を絶たない不正

福岡県内の約20の監理団体でつくる連絡協議会の会長も務める藤村氏は「母国を離れて心細い彼らに対し、私たちは親代わりのつもりで関わらないといけない」と語る。

こうした努力があっても、不正は後を絶たない。法務省によると、実習生への賃金未払いや暴行などの不正は全国で毎年200件前後発覚。今年1月からの半年間で、約4千人の実習生が失踪した。
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新たな制度では、こうしたケースを、どの機関がどのようにチェックするのか明確になっていない。法務省の説明では、監理団体に代わる「登録支援機関」の役割は、受け入れ企業との「連携」を行うだけ。新設される出入国在留管理庁や厚生労働省が直接指導することとされているが、十分な人員が確保できるかは不透明だ。

■「落ち着いて議論してほしい」

昨年11月には技能実習生の受け入れ枠が拡大され、実習期間も3年間から5年間に延長された。藤村氏は「実習制度が拡充されたばかりなのに、来年春に全く別の制度が始まれば現場が混乱してしまう。国会では、外国人が安心して働けるような制度に向けて、落ち着いて議論してほしい」と求めている。
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【ワードBOX】外国人技能実習制度の監理団体

技能実習生を受け入れ、各企業に技能実習の適正な実施の確認と指導をする営利を目的としない団体。事業協同組合や商工会などが担っている。受け入れに際しては実習生の滞在施設を整え、実習前の日本語教育や日本の文化、法律などの指導が定められている。実習生に対する賃金未払いなどが問題になったことから、昨年11月に施行された技能実習適正化法で監理団体は国の許可制となり、新設された認可法人・外国人技能実習機構が不正の監督に当たるようになった。監理団体の責務が厳格化された一方、優良な団体は実習期間の延長や受け入れ人数枠の拡大などが認められた。

11/6(火) 10:12
西日本新聞
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