ラオスといえば、自転車一台のパサーソンが、名誉を求めて橋を行き交う、
勇壮な橋祭りとして、この地方に知られている。
乾季が終わり雨季へと向かうと、メコン川の水量が増し、洪水に備え始める。
氾濫原は、藻類やプランクトンなどが多く発生し、草食性の魚が、繁殖する。
俺はいつもそれが狙いだ。
泳いでいる魚の、できるだけ元気のよいものを10匹ほど、
こっそりさらって家に持ち帰る。
そして、深夜、俺一人の祭が始まる。
俺はもう一度部屋中にかっさらってきた魚をばら撒き、
ウォーッと叫びながら、魚の川の中を転げ回る。
捕ってきた魚は、川の臭いがムンムン強烈で、俺の食欲を刺激する。
モックの中が、もうすでに痛いほど広がってしまっている。
魚の中に顔を埋める。臭ぇ。
水臭、青臭さや、魚独特の生臭さを、胸一杯に吸い込む。溜まんねえ。
臭ぇぜ、ワッショイ! 魚ワッショイ!と叫びながら、剥がれたウロコを拾う。
嗅ぎ比べ、一番生臭いキツイやつを主食に選ぶ。
その魚には、泥の汚れがくっきりとあり、ツーンと臭って臭って堪らない。
その魚を育てた、プランクトンは川で一番風格のあった寿命40日の、
植物プランクトンだろうと、勝手に想像して、鼻と口に一番臭い部分を押し当て、
思いきり嗅ぎながら、生魚野郎臭ぇぜ!俺が食ってやるぜ!と絶叫し、
モーラムをいっそう激しく奏でる。
そろそろ限界だ。
俺はスカリから魚を引き出し、自分の腹の中へ、思いっきり遊泳させる。
どうだ!気持良いか!俺も良いぜ!と叫びながら食べ続ける。
メコン野郎の魚は、俺の胃液でベトベトに汚される。
ガチムチ野郎、貴様はもう俺のもんだぜ!
俺の祭が済んだあと、他の魚とまとめて、スカリに入れたのを水の中にしまい込む。
新たな食料を手に入れられないときに備えて、非常食に使う。
ときどき自分が飼っていた事を忘れて乾季に産卵することもあるんだぜ