日本に密輸された金の多くが、大手商社経由で輸出されていた実態があることが財務省の調べで分かった。
金の密輸は、輸入時に支払いを不正に逃れた消費税分だけ密輸業者に利益が入るため、2014年の消費増税以降に急増した。
来年10月の再増税を控え、財務省は大手商社に対し、取引の仕方を見直すよう協力を求めている。

金を輸入する場合は本来、税関に申告し、消費税を納める必要がある。
しかし、密輸業者は消費税がない香港などから金を買って日本の税関に申告せずに密輸し、買い取り業者に消費税込みの値段で売って利益を上げている。

財務省の調べでは、金は買い取り業者から大手商社数社に転売され、国外に輸出されているという。
少なくとも、このうち輸出量の多い2社は、取引先の金の入手ルートや形状などの確認を十分していなかったという。

日本では、金の輸出の8割近くを大手商社が担う。
金の輸出には税関長の許可が必要で、国際取引でも信用が欠かせないからだ。

商社は金の輸出額に応じ、消費税分の還付を受けられるため、買い取り業者から消費税込みの値段で買っても損はしない。
密輸業者から消費税込みで金を仕入れた買い取り業者にとって、商社は都合のいい転売先になっている可能性がある。

17年に日本から輸出された金は215トンなのに対し、正規の輸入は5トン。
日本国内での金の産出量や消費量から判断すると、財務省は輸出量のうち160トン程度が密輸された金とみている。
消費税の脱税額は年640億円に上る計算だ。

金の密輸は消費税率が5%から8%に引き上げられた14年以降に急増。
17年6月までの1年間の金密輸事件は前年比1・6倍の467件、脱税額も1・4倍の約8億7千万円と、いずれも過去最高だった。

来年10月に消費税率が10%に上がれば金密輸で得られる利益が増えるため、財務省は17年末から密輸対策を強化。
商社側に入手ルートが不明な金を買わないようにするなどの見直しを要請した。
今年4月には金を密輸したり、密輸された金を買い取ったりした際の罰金を大幅に引き上げる改正関税法を施行した。

ただ、買い取り業者や流通業者の罪が問えるのは、業者が密輸された金だと認識していた場合。
事情を知らずに取引している業者を罪に問うのは難しいという。
密輸を「水際」で阻止するため、財務省は空港などに金属探知機やX線検査装置を増やしているが、密輸量の急増に追いついていない。

金の輸出量が多いとされる大手商社2社は朝日新聞の取材に対し、財務省からの要請があったことを認め、1社は「適正な取引を実施してきた」としながらも、「金の密輸撲滅に向けた取り組みとして、本年5月以降は買い取り業者からの金の購入を全面的に停止している」と回答。
別の1社は「過去より複数社から購入しているが、契約上の守秘義務の兼ね合いもあり、当社からの開示は差し控える」としている。

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