熊本県のPRキャラクター「くまモン」が、海外進出に力を入れている。県は「ミッキーマウスのような存在」(蒲島郁夫知事)にすると宣言し、海外企業への商品製造・販売の解禁、アニメ製作、動画投稿サイトでのチャンネル開設など新戦略を次々と発表。ご当地キャラ界の“巨人”はどこに向かうのか-。

「くまモンは県のことを忘れている…?」

 「最近、くまモンは県のことを忘れているとの声をいただくんですが、外で活躍することが結果として県民の幸せにも通じる」。10月、熊本県庁であったアニメ製作会見でくまモンの生みの親でもある放送作家の小山薫堂さんは強調した。

 アニメは著名クリエーターが所属する米国のスタジオが製作し、くまモンの知名度が低い欧米で放映、知名度アップを狙う。テーマが「幸せ」という以外、ストーリーの詳細や完成時期、放映する媒体などは「非公表」。会見には、出資する広告大手アサツーディ・ケイ(ADK)や吉本興業の幹部も顔を並べた。

熊本県「世界で知名度広げ、誘客に期待」

 蒲島知事がアニメ製作を表明したのは1月の年頭記者会見だった。今年を「大いなる挑戦の年」とし、県内企業のみに認めてきたイラスト入り商品の製造・販売を海外企業にも解禁。新たに徴収するイラスト利用料を原資に、ADKを通じて中国で問題になっている偽物商品対策を進めると発表した。

 九州新幹線の全線開業に向け、2010年に登場したくまモン。イラスト利用無料などの戦略で知名度を上げ、17年の関連商品の売上高は過去最高の1408億円を突破。熊本地震が起きた16年以降、中国や台湾など東アジアでも人気が上昇している。

 県担当者は「世界中で知名度を広げ、誘客や県産品輸出で他の都道府県との違いを出す切り札にする」と話す。9月には英語などの字幕付き動画を配信する「くまモンTV」を動画投稿サイトに開設。くまモンも、国際ハブ(拠点)空港がある香港へのイベント出張を昨年の約6倍に増やした。

「競争に勝てなくなる」地元企業は懸念

 地元には反発もある。海外企業へのイラスト利用解禁が1月に発表されると、商品を輸出する県内企業が強く抵抗。17年の海外売上高は約25億円だったが「競争に勝てなくなる」と懸念が広がった。海外での製造・販売の際には徴収を始める計画だったイラスト利用料は、県内企業は対象外とせざるを得なかった。

 紆余(うよ)曲折を経た海外利用の新制度は10月に全ての商品で解禁となり、県は今月1日までに中国や香港、台湾など24法人のイラスト利用を許可した。県によると、他に中国などから300件超の申請があり、新制度への反応は上々という。

 県内企業幹部は「まだ影響はないが先は見えない」と話す。県は認証シールや限定イラストなどの優遇策を設けたが「シールを貼るにも工賃はかかる。くまモンを使って熊本を盛り上げる気持ちは冷めた」。別の県内企業も「(新制度で)海外でビジネスをする魅力は無くなった」と不満を口にした。

 9月の県議会では「熊本ではなく、くまモンだけが海外で有名になっているのでは」との声も。県は「くまモンの価値を高めることが県全体の経済的、精神的な価値の増大につながる。人気を保つには変わり続けないといけない」と理解を求めた。

=2018/11/09付 西日本新聞夕刊=
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