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大東島紙幣

大東島紙幣(だいとうじましへい)とは、沖縄県の大東諸島において使用されていた紙幣類似証券の商品引換券のことである。
正式には「南北大東島通用引換券」とよばれ、本来は砂糖手形であったものが島の流通貨幣となったものである。別名を玉置紙幣ともいう。

サトウキビの栽培や製糖業を営む企業である玉置商会が島全体を所有していた。
また特例として町村制は施行されず島の自治が全面的に委ねられていた。
即ち、日本の行政機関による地方行政が及ばない、公的届出すら事実上不可能な「社有島」であった。
警察官も戦前の警察制度にあった請願巡査であり、玉置商会が人件費を負担していた。

島内では日本政府発行の硬貨や日本銀行券は一切流通していなかったため、島内の子供も日本の正式な通貨だと思い込んでいたという。
玉置商会からすれば島の住民に支払うべき現金を用意する必要が無く、その資金を運用することで大きな利益を上げていたという。

また玉置商店の紙幣は島でしか使えないため、島から出る時は玉置商会の事務所で日本円と交換できるとされていたが、
これによって出稼ぎ労働者が勝手に島から逃げ出すのを防ぐ効果もあった。
同様の制度はハンセン病療養所の特殊通貨や西表島での炭坑切符(西表炭坑を参照)、
さらに東南アジアにあったプランテーション農場の労働者にも適用されており、日本国内における植民地的経営の実例や隔離を目的とした疑似通貨であったといえる。