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続き


このまま頑張っていれば、いつかは安定した雇用に就けるはず。就職氷河期世代はそう信じ続けていた。だが、いくら努力を重ねてみたところで評価されず、使い捨てのような働き方を強いられてきた。

中年フリーターは、声をあげても無駄だと学習してしまった。企業や社会に対する不信感だけが募るばかりで、もはや生活を向上させようという意欲も喪失している。

バイト3つを掛け持ちして、なんとか糊口をしのぐ中年フリーター(43歳)がいた。彼が自嘲気味に話していたのが印象的だ。

「アベノミクスはテレビで見る大企業の話。僕ら“下々の者”に恩恵はありませんよ」
「失われた10年」が「失われた20年」に長引いたのは、雇用問題について、国が本気で取り組まなかったからだと言える。事態はさらに深刻化して「失われた30年」に向かおうとしている。

就職氷河期が真っ只中の2000年当時、「フリーターは甘い」「若者が仕事を選り好みしている」という風潮が強く、真剣な議論がなされなかった。第一次安倍政権では、若者のフリーター問題の対策として「再チャレンジ」政策を打ち出したが、就職氷河期世代の多くは浮かばれないままだ。再チャレンジできたのは首相だけではないか。

その間に「若者」は「中年」になった。そのツケが「中年フリーター」となって、国家を揺るがしかねない問題となっていることに、どれだけの人が気づいているだろうか。「働けない働き盛り」の存在を、見過ごしてはならない。外国人労働者の受け入れ拡大の議論の前に、中年フリーターを救うべきではないだろうか。