京セラの創業者の稲盛和夫名誉会長(86)が若手経営者に経営哲学を伝える「盛和塾」が2019年末に解散し、活動を終えることが明らかになった。稲盛氏が高齢となり、積極的に活動に参加できないことが背景という。経営哲学を直接学ぶ塾は引き継がれず、一代で終わることになる。

盛和塾は京セラを創業した稲盛氏の経営哲学を学びたいという要望のもと、1983年にできた自主的な勉強会「盛友塾」に端を発する。89年に名称を変更して全国各地で活動が広がり、日本に56、海外44の塾があり、塾生は10月末現在で1万3832人に達した。かつてはソフトバンクグループの孫正義会長兼社長も学んだ。

主に京セラの経営哲学の中核を担う小集団で部門別採算管理を徹底する「アメーバ経営」や、稲盛氏の実体験や経験則に基づき人間性や社会貢献などを追求する「フィロソフィ」と呼ぶ独自の考え方を学ぶ。

主に関西と関東で年5回ほど例会があり、勉強会では塾生の経営体験発表や講話、経営問答、懇親会などを実施する。また年1回、全国から塾生が集う世界大会がある。

稲盛氏は第二電電(現KDDI)の設立や日本航空の経営再建なども手がけた。80歳をめどに活動を終える予定だったが、日本航空の再建の成功もあり、海外を中心に要望が強く活動を続けていた。19年の各地の例会や勉強会は通常通り行い、稲盛氏は同年夏の世界大会に出席する予定だ。

稲盛氏は近年では高齢のため、地元京都の会合などで公の場に出ることも減っていた。直近では盛和塾の勉強会は3月に出席したほか、私財を投じて設立した稲盛財団が科学や芸術の発展に寄与した人に贈る「京都賞」の授賞式に11月に出席した。

稲盛氏は「盛和塾は一代限りで終わらせるのが一番良いと判断した。今まで学ばれたことを実践し、社会のために尽くされることを切に望みます」とコメントした。個人の経営哲学の集積である塾を他の人に引き継ぐことにより、考え方や組織のあり方が変化するのを危惧したという。
2018/12/6 20:57
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3864951006122018TJ1000/