https://jp.reuters.com/article/nissan-ghosn-breakingviews-idJPKBN1O406T

2018年12月5日 / 03:21 / 19時間前更新
ゴーン容疑者「勾留長期化」が脅かす日産連合の未来
Pete Sweeney
[香港 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日産自動車 (7201.T)の前取締役会長、カルロス・ゴーン容疑者(64)の勾留長期化は、仏自動車大手ルノー(RENA.PA)、三菱自動車(7211.T)との3社連合の将来を見据えた協議を阻害するリスクをはらんでいる。

ゴーン容疑者は、日産からの報酬を有価証券報告書で過少申告したなどの容疑で11月19日逮捕されたが、まだ正式に起訴されていない。報道によれば、勾留期間がさらに延長される可能性がある。

この厳しい処遇は、経済の生命線である自動車産業を各方面の攻勢から守ろうと必死の日本政府と、フランス政府の溝を広げるものだ。4兆円企業である日産と仏ルノーのアライアンスの行方を決める交渉は、これまで以上に困難なものになるだろう。

有罪にせよ無罪にせよ、スター経営者だったゴーン容疑者は、無実の人間を捜査機関が逮捕することはないと広く信じられている司法制度に拘束されている。日本の有罪率は刑事裁判の99%を超えるとされる。検察官は通常、自白を得ることを重視し、裁判の長期化を避けようとする。だが報道によると、ゴーン容疑者は容疑を認めていない。

東京拘置所の暖房のない部屋での勾留期間は11月30日、10日間延長された。4日付の産経新聞は、検察が来週にも関連容疑でゴーン容疑者を再逮捕する可能性があると報じた。そうなれば、12月下旬まで勾留される可能性がある。

法的助言へのアクセスが制限された状態で、ゴーン容疑者の勾留が長引けば長引くほど、今回の事件は日本政府の暗黙の了解を得た日産取締役会によるクーデターだとする陰謀論が力を得ることになる。

フランスのルメール経済・財務相は、同容疑者が犯したとされる不正行為の裏づけを仏政府として確認していないと発言。逮捕された2人が外国人だったことも助けはならない。巨額不正報酬は、日本の経営幹部による共謀や知識なしに可能だったとは考えられない。

日本側がルノーやフランス政府に抱いている不満は理解できる。日産株式の43%を保有するルノーは、日産の戦略的な方向性に絶大な影響力を持っており、ルノーの筆頭株主である仏政府も同様だ。一方の日産には、パートナーであるルノーに対する議決権がない。

さらに、1999年に日産の最高執行責任者に就任して同社を倒産の危機から救ったゴーン容疑者だが、その後の功績は比較的ぱっとしない。同容疑者がトップ在任中、日産株のパフォーマンスは、東証株価指数(TOPIX)のそれを100%程度下回っている。

だがそうだとしても、ゴーン容疑者の処遇は、例えば劇的なスキャンダルが発覚した東芝(6502.T)やオリンパス(7733.T)の経営陣が受けたものに比べて極端に厳しい。

もし日産・ルノー提携のバランスを是正したい考えが日本側にあるならば、ゴーン容疑者を苦しめることは助けにならない。