https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-12-05/PJ90KG6K50XX01?srnd=cojp-v2

ヘッジファンド、夢の仕事は消えつつある−業界の厳しい現実定着

Katia Porzecanski、Nishant Kumar
2018年12月6日 7:33 JST
→ゴールドバーグ氏は55歳、高過ぎた報酬が再就職の壁に
→取引自動化やパッシブ投資人気で30歳の若手すら逆風感じる

金融業界で30年を費やしたデービッド・ゴールドバーグ氏の夢はしぼみつつあった。

  ゴールドマン・サックス・グループの自己勘定取引デスクやマイケル・ミルケン氏の下での運用経験と、誰もが一目置く経歴を持つゴールドバーグ氏は自分自身のヘッジファンドを開始しようとした。しかしタイミングが悪く、うまくいかなかった。

  再就職もできなかった。交流の幅を広げたり、採用担当者と会ったりしたが、結局得られたのは、選択肢が狭まっていくという強い危機感だけだった。

  55歳のゴールドバーグ氏は、報酬が高過ぎるのだ。ヘッジファンドは、同氏1人を雇うのと同じ報酬で若手運用者2、3人を雇える。


  結局ヘッジファンド以外の仕事に転じたゴールドバーグ氏は「非常に厳しい」と言う。「15年以上の経験を持ち、何か別のこと、あるいは新しい段階を求める人には、最悪の時期だ」。

  30歳の若手すら逆風を感じている。取引の自動化やデータの氾濫、パッシブ投資の人気で、銘柄選択をなりわいとするストックピッカーの影響力は薄れた。手数料収入の減ったヘッジファンドはアナリストを削減の対象にしている。10年に及ぶ強気相場の中で、押し目買い以上の戦略のために経費を払う必要がなくなった。 

  この悪環境は、ヘッジファンド業界全体の見通しの暗さを反映している。ヘッジファンド・リサーチによれば、過去3年間に閉鎖したファンド数は新規ファンド数を400本近く上回った。つまり職探しをする人が多いことを意味する。

  一方で、自発的に辞める人はほとんどない。かつては独立して自分のファンドをスタートしたようなベテラン運用者らも、どこへも行かず、組織は停滞する。いつかは会社のパートナーになる、あるいは自分の会社を設立する、こうした夢が決してかなわないことに人々は気付き始めた。

  「誰だって、より良い機会、より良い職を見つけたいが、そんなものは存在しない。一度席を立つと次に座る椅子がないかもしれないので、誰も辞めない」とゴールドバーグ氏は話す。

  2年間の失業の後、同氏は結局、メリダ・キャピタル・パートナーズに入った。ニューヨークのマンハッタンにある同社でマリフアナ関連業界の勝ち組と負け組を選ぶ仕事をしている。「成長見込みや利益見通しを考えるより、はるかに興味深く、わくわくする」と語るゴールドバーグ氏は、選んだ銘柄が「15年後にファイザーやメルクになるかもしれない」という新たな夢を見つけたようだ。

原題:Hedge Fund Dream Job Is Vanishing as Harsh New Reality Sets In(抜粋)