梅毒の感染がいまだに拡大している。厚生労働省は、梅毒の発生動向をより詳細に把握することを目的として、来年をめどに届け出基準を改正する見通しだ。特に増加が著しいのは20代の女性であるが、「自分は大丈夫」、「日本は大丈夫」とは考えてはいけない。対策を真剣に検討すべきである。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

梅毒の流行が大変なことになっている。

2016年9月、筆者は「感染拡大が止まらない、このままでは年末に4000人を突破!?」(参照記事『女子高生まで!梅毒の感染拡大が止まらない理由』)と警鐘を鳴らしたが、あんなのはほんの序の口だったのだ。

というのも国立感染症研究所の発表によると、2018年第44週(10月29日〜11月4日)、医療機関から届け出があった累積患者数は5811例。このまま行けば年内に6000例超えはほぼ確実とみられる。

梅毒の届け出数は、2014年頃から急激に増加し始め、昨年は年間報告数が44年ぶりに5000例を超えたことが話題になった。

特に増加が著しいのは20代の女性で、2013年〜17年の5年間で、20〜24歳では40例から551例で約14倍、25〜29歳では33例から418例で約13倍に増えている。一方男性は全体的に女性よりも患者数が多く、25〜54歳まででは728例から2877例で約4倍。特に45〜49歳では91例から484例で5倍以上に増えている(厚生労働省『性感染症報告数 年齢(5歳階級)別にみた性感染症(STD) 報告数の年次推移』)。

どうしてこんなことになったのか。

理由として2016年に挙げたのは、「性行為の低年齢化」と「コンドームを使わずに性行為を行う人が増えている」ことだった。「身を守る術(すべ)を知らない」若者の実態が反映されているとの考察が主流を占めていたのである。だが2年たって、改めて考えてみると、本当かな?と思う。

なぜなら性行為は以前から低年齢化していたし、コンドームを使わない性行為もしかり。1940年代のペニシリンの普及以降、劇的に減少していた発症数が2013年あたりから急増に転じたのには、それ以外にも理由があるはずだ。

2013年以来、増えているのは何か。

理由として注目されているのが訪日外国人旅行者の急増だ。2013年には初めて1000万人を超え、2015年には約1974万人と前年比47.1%も増加。2016年には約2404万人に達し、わずか3年で2.3倍にも伸びている。

しっかりした調査が行われていないので断定はできないが、関係はかなり深いとみて間違いない。

例えば、訪日外国人数第1位の中国では、日本以上のペースで梅毒の感染が拡大しており、中国の全体人口が日本の10倍なのに対して梅毒患者数は300倍だという。訪日数2位の韓国も近年、梅毒やHIVなどの性感染症が急増している。

外国人の患者が来日し、性風俗産業で働く若い女性に感染させている可能性は十分に考えられる。2014年以降に患者が急増したある地方都市の調査では、2017年に異性間性交渉で感染した男性のうち71.2%が過去数ヵ月以内に風俗店を利用しており、女性の25.9%はCSW(コマーシャルセックスワーカー:性労働者)が占めていたというデータがある。

訪日外国人⇒20代風俗嬢⇒大人の男性たち

という図式だ。

大人の男性たちの先では、30〜40代の女性たちにもじわじわと拡大が広がっている。

ただしここで、強調しておきたいのは、決して「外国人は来るな」という短絡的な結論に至ってはいけないということだ。国際化が進み、アジアはどんどん一体化しているということが背景にある。それはインフルエンザが冬の病気から通年の病気へと変化しつつあることでも分かるだろう。そもそも感染症対策は「どこの国に責任がある」という問題ではなく、こうしたグローバル化の進展を念頭に考えるべきものなのである。

ちなみに、「風俗との関係が深そうだ」というと、「自分は関係ない」と思ってしまう人がいそうだが、甘い。

感染拡大には、近年増えているSNSや出会い系アプリを通して知り合う交際も影響していると、多くの専門家はみている。

なんとかしなければいけないのだが、対策がなかなか効果を発揮しないのは、医者にも患者にも「梅毒は過去の病気」という認識があるかららしい。

ほんの100年前の大正時代には、日本人成人男性の10人に1人は梅毒だったというデータがあるし、戦後間もない1949年には年間17万6000人余りの患者が発生したと報告されている。

※続きはソースでご覧ください。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181214-00188384-diamond-soci