商業・法人登記に記されている代表取締役の住所について、法務省は一般向けのオンラインサービスでは表示しないよう運用を変える方針を固めた。プライバシー保護の高まりに対応する。一方、訴訟など万一の場合、会社側に連絡を取れるようにするために必要だ、との声が弁護士らからあがっていることに配慮し、法務局での閲覧は従来通り認める方向だ。

 会社法では、会社設立時に「代表取締役の氏名及び住所」を登記するよう定めている。訴訟が起きた場合、会社の事務所がなくても裁判所の管轄を決め、裁判書類を送付するためだ。これに対し、個人情報保護の点から問題視する声が強まり、法務省は昨春から議論を始めた法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会に、裁判に訴える場合など弁護士ら「利害関係」のある人にだけ開示する原案を示していた。

 部会では、経団連や経済同友会など経済界は、本社や支社などで対応できるので「会社の住所で十分」と主張。一方、機関投資家や弁護士会、大学研究者は「経営者には社会的責任がある」「会社の計画倒産や詐欺被害があった場合に備え、代表者の自宅住所は必要」と反論した。

 部会での議論を受け、法務省は、プライバシーに一定の保護をするため、簡単に請求できるネット上での表示をとりやめる方針に切り替えた。また、ドメスティックバイオレンスなどの犯罪被害者から申し出があった場合は全面的に記載しない方針だ。来年1月にも結論をまとめ、2〜3年後から変更する考えだ。(加藤裕則、杉浦幹治)

■「信用調査の『イロハのイ』」

 社長ら代表取締役の住所を商業・法人登記に載せなければならないのはなぜか。

 「社長の不動産情報は、会社の…残り:755文字/全文:1441文字

2018年12月13日09時36分
朝日新聞デジタル
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