中国では今年に入って「反スパイ法」や「インターネット安全法」が次々と制定されるなど一段と締め付けが厳しくなっていた。
なかでも、6月に施行された「国家情報法」は、国家主権の維持や領土保全を理由に、情報工作員が立ち入り制限区域へ入ることを許可するもので、企業や個人にはその「協力義務」が課せられている。
つまり、ファーウェイが民営企業であろうとも、習指導部が情報提供を要請すれば、ファーウェイが持つビッグデータを思いのまま手に入れられることになるのだ。
「大国」から「強国」を目指す中国の思惑はどこにあるのか?

自衛隊の元陸将でハーバード大学アジアセンター・シニアフェローも務めていた渡部悦和氏が話す。
「中国政府は'15年に策定した『中国製造2025』だけでなく、これに先立つ'16年の『第2次5か年計画国家科学技術革新計画』のなかでも重点目標のトップに5Gを掲げ、2030年までにAIでも世界一になると宣言しています。
昨年の党大会では2049年までに世界一の『強国』になると謳っており、海洋強国、航空強国、衛星強国、サイバー強国、そして科技(科学技術、先端技術)強国を目指す……としていた。
習近平国家主席は就任以来、『軍民融和』を掲げ、最先端技術の軍事転用を推し進めており、その象徴がファーウェイだったのです。
人民解放軍総参謀部出身とされる創業者の任正非ら、軍事技術者が数十人集まり設立したファーウェイが、わずか8年ほどで世界170か国に社員18万人を擁する世界一の通信機器メーカーに上り詰めたのは、人民解放軍の後押しがあったからこその話。
ファーウェイが5Gの覇権を獲得すれば、すべてのモノを繋げるIoTを駆使して、人民解放軍の兵器は飛躍的に自動化・無人化が進むでしょう。
サイバー戦でも、現在では膨大なマンパワーが要るが、すべて自動で対応できるようになり、こうした軍事革命によって、人民解放軍が米軍に先んじることになってしまう」
覇権を目指す2つの大国の狭間で、日本も5G時代を迎えることになる。
(SPA! 2019年12月25日号)より