農協や捕鯨団体の日本行政府への圧力により、結果として日本経済は弱体化【米メディア】

日本政府は昨年末、クジラの資源管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を発表した。IWCの設立目的が“捕鯨産業の秩序ある発展”であったが、クジラの捕獲を一切認めない立場に固執する反捕鯨国との対立が深まり、機能不全に陥っているためとしている。

しかし、一部の米メディアは、市場動向を無視して、捕鯨団体という一部の圧力団体からのはたらきかけで、国際団体からの脱退という愚行を犯したと手厳しい。

そして、競争力のない自国の農業を守るべく、日本政府に対して、輸入農産品の関税撤廃、あるいは引き下げに反対するよう訴えている農業協同組合(JA)と同様、多くの市民に害を及ぼすばかりか、結果として日本経済を弱体化させる張本人だとして、糾弾している。

■1月5日付『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「農業団体等、日本政府へ有害な圧力を加える団体」

  日本政府は2018年末、商業捕鯨を再開するため、IWCからの脱退を発表した。

  『ジャパン・タイムズ』紙によれば、捕鯨団体を支持基盤とする議員連の圧力を受けて、安倍晋三首相が止む無く決断したと報じている。

  現在日本では、クジラ肉の消費量は激減していて、なおかつ、小売業界やレストラン業界からクジラ肉の引き取りを拒絶されているという現実問題があるにも拘らず、である。

  同紙はまた、この措置によって仮にクジラ肉が市場に出回るようになっても、特に若い世代から、クジラ肉の需要が拡大することは予想できないとも報じている。

  日本の捕鯨産業は矮小化し、現在は政府補助政策で生き残っていると言える。

  これと同様、日本の農業人口も減少し、2016年時点で僅か200万人以下となっている。

  しかし、捕鯨団体と同様、人口比2%弱を擁する農業団体であるJAが、今後の日本経済や政治の行方を占うことになる、行政府の方針に影響を与えていることは重大な問題である。

  すなわち、JAがこれまで行ってきたのは、競争力のなくなった一部の国内農産品を守るため、日本政府に対して、輸入農産品への関税撤廃、あるいは引き下げに真っ向から反対してきている。

  同時にJAは、様々な形で日本政府から補助金を獲得している。

  一方で、アベノミクスに代表される経済政策が進められてきた中にあって、日本人の給与水準は長い間停滞したままである。

  にも拘らず、日本の消費者は、政府補助を受けたJAや捕鯨団体の圧力の下、高い関税がかけられたままの輸入産品や、割高な国内産品を買わざるを得ない状況に追い込まれている。

  更に言えば、国政を預かる政治家の多くは、人口の少ない地方を本拠とする農業団体や捕鯨団体の支持者で持っているのに対して、人口が多く消費が最大の都市に暮らす市民にとっては、かかる行政府の方針に甘んじて従わざるを得ない状況と言える。

  特に、多くの非正規雇用労働者や待機児童を抱える若い夫婦としては、JAや捕鯨団体への補助金よりも、むしろ、安倍首相の掲げる“働く環境改善”のために支出して欲しいと望んでいるはずである。

  かくして、人口減少に喘ぎ、今後の経済規模縮小という問題を抱える日本にとって、一部の団体からの圧力に屈することなく、真に日本の将来のためになるような、大胆な構造改革及び革新的な事業展開に注力していくことが肝要であろう。

(2019/01/05)
】(2019/01/05)