自衛隊が災害派遣中の支援任務を自治体に提案できるよう、
防衛省が昨年7月の西日本豪雨後、自衛隊の運用方針を改めたことが
6日、同省関係者への取材で分かった。従来は原則、自治体の要請に
基づく「受け身型」の支援だったが、大規模災害時は混乱状態に陥る
自治体も多い。運用の見直しで、自衛隊側がより積極的に活動に当たる
ことが可能になる。

 災害派遣は自衛隊法などに基づく任務の一つで、原則は都道府県知事らの
要請で実行。人命救助や給食・給水支援といった支援任務は、
現地の部隊から連絡員を派遣し、自治体の要請を受けて対応してきた。

 ただ、西日本豪雨のような大規模災害では、被災経験がなく小規模の
自治体が、対応に追われて的確な支援要請を出せず、自衛隊も要請が
出るまで待機することもあったという。

 近年は自衛隊も柔軟な支援が可能になり、西日本豪雨では岡山県倉敷市
真備(まび)町で陸上自衛隊が災害ごみを移動するため、初めて大型重機を
投入。道路網が寸断された広島県呉市では、食品を届けるため
コンビニの輸送車を海上自衛隊の輸送艦で運んだ。

 こうした対応は国や自治体との協議で最終的に実現したが、
政府は今後も自治体側の要請を受ける形が続けば、自衛隊に迅速な
要請ができない可能性があると判断。西日本豪雨での対応を検証し、
各省庁が集めた情報を自衛隊に集約し、自治体に提案する
「提案型支援」が有効と判断した。

 これを受け、防衛省では大規模災害時に、決定権のある本省課長級以上を
連絡員として現地に派遣し、提案した支援策を自衛隊が直ちに
実行できるよう運用方針を変更した。

 防衛省関係者は「これまで自治体の経験値次第で対応スピードに
差が出たが、今後は地域性に関係なく迅速に必要な支援任務を行うことが
期待できる。こうした対応が明確化された意味は大きい」と話している。


産経新聞 2019.1.6 19:46
https://www.sankei.com/affairs/news/190106/afr1901060014-n1.html