【フランス】ゴーン氏逮捕、フランスのメディアは「それ見たことか」と冷ややかな論調

ルノー、日産自動車、三菱自動車工業の会長を兼務するカルロス・ゴーン氏が19日、金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に逮捕された。ところで、フランスの一般メディアではどのように報道されているのだろうか?

■慎重、かつ冷ややかな反応

メディア上では右派左派を含め、全体的に冷ややかな論調だ。フランスの庶民はもともと「億万長者アレルギー症」なうえに、折しも先週末に17日に、ガソリン価格高騰と購買力低下に反対する
「21世紀の一揆」と呼ばれるデモが全国的レベルで起き、約28万人が「車がなかったら仕事に行けない、でもそうしたら食えなくなる!」
と各地の主要道路を占拠して国中を大渋滞に陥れたばかりである。

国民の頭に血が昇っている、そんな週末明けに届いたゴーン氏逮捕に関する報道には、左派・右派を問わず、「どうせそんなことだろうと思ってた」感が漂う。

19日、右派フィガロ紙でさえ『栄光の頂点でなぎ倒されたゴーン』というタイトルで記事を発表。
サブタイトルは「金欲と権力欲という2つの欠点の代償を支払う羽目に」というものだ。本文では「ゴーン氏は古代ローマ史に通じていたから知っていたはずだ。」


ゴーン氏の巨額報酬に対して批判的な記事を何度も発表してきた左派デジタル新聞メディアパールは、同日、『神聖不可侵と思い込んでいたゴーン氏の転落』というタイトルで、「これまでうまいこと疑惑をもみ消して来たが」で始まる手厳しい記事を発表。

そして、過去のゴーン氏に関する数々の疑惑に言及した後、「経営者の給与を厳密検査して株主に情報を提供するコンサルタント会社Proxinvestが、
ここ10年、ゴーン氏の給与が不透明なものであることを告発し続けて来たが、取締役会からなんの反応も得られなかった」とし、取締役会の怠慢を告発している。

20日夕方に発売された中道左派ル・モンド紙経済版(21日付け)の一面見出しは『ルノー:パリはゴーン時代を終え、後継者を準備』。

『太陽王の転落』とタイトルした記事では、2016年にヴェルサイユ宮殿のグラン・トリアノンで開かれたゴーン氏の再婚パーティーの場面の描写から始まり、「今や財政不正の疑いで東京の拘置所に捕らわれた王様は裸だ。

日産自動車の後継者、西川広人会長は、ゴーン氏をあらゆる罪で告発し、なかでも、ヴェルサイユ宮殿での再婚のパーティー費用を会社に支払わせたことを非難している。

日本で大人気だったゴーン氏だが、ルイ14世が言ったとされている、『私が役職に就けてやった者は恩知らずな振る舞いをするようになり、残りの100人は不満を漏らす輩になる』という言葉を思い出すべきだった」と皮肉っている。