お知らせが来た時点では「欠席」と決めていました。不登校当時の同級生に会いたくないという気持ちもありましたが、別の理由のほうが大きかったそうです。

20歳を超えてから送られてきた国民年金や国民健康保険の支払い通知、そして成人式用スーツのDMに並ぶ金額は、自分が払えるような額ではありませんでした。

「大人って生きているだけでも、こんなにお金がかかるんだ」と、将来への不安に掻き立てられたそうです。だから「成人式で浮かれる気分にはなれなかった」と。

ところが、親から連絡がありました。地元に帰る交通費も新しいスーツも買ってあげるから「地元に戻っておいで、ばあちゃんも喜ぶよ」とのこと。
Aさんが「親や祖父母にとってみれば嬉しいものなのか」などと思っていたころ、なんと久方ぶりの友人から「成人式って来る?」との連絡がありました。

「もしかして行ってみれば楽しいものなのか」と思い始めたAさんは、ネットで成人式の情報を検索。
「めっちゃ楽しかった〜」というツイートを見つけ、さらには「成人式で再開して付き合い始めました」という情報も。
独り身の男性としては、この時点で期待感がMAXに膨れ上がります。

その後も「行ってみれば楽しいのかな」「やっぱり楽しくないだろう」という気持ちのあいだで揺れに揺れながらも、覚悟を決めて帰郷。
真新しいスーツ姿は、親にも祖父母にも喜ばれ、なんだか気恥ずかしい時間をすごし、いざ成人式の式場へ。

「ところが会場には無造作ヘアの男とかギャルとか、リア充ばっかり。
オレの居場所なんて1ミリもなかった」(Aさん)。

式典会場は、学生当時、スクールカーストの上位グループにいた者が幅を利かせ、ボッチの自分は目立たず隅にいるだけ。
連絡をしてきた友人には、当日、連絡もつかず、町長さんの「ありがたいお話」を聞いたあとで退散。
しかし家を出る前に「友だちに会えるから夕飯は食べてくるわ」と親に言ったため、家には帰りづらい。