https://www.asahi.com/articles/ASM1J4HGRM1JPLPB006.html

「この小石を四万十川の河原に戻してください」。年が明けたばかりの12日、四万十市観光協会に、
一枚の手紙とともに小さな石が届いた。手紙には悔悟の気持ちが込められていた。

手紙は透明のテープで小石が貼り付けられていた。石は約5センチで、ベージュ色でしま模様が浮かぶ。
差出人は「川崎市在住」とだけ。

「昨年、四万十川に旅行に行った際に、河原の小石をひとつ持ち帰ってしまいました。大変申し訳ありません。
お手数ですがお戻しいただけませんでしょうか」。旅行で四万十川を訪れた人からの依頼だった。

郵便物を扱った協会職員の野地弥生さん(35)は「こんな依頼は初めて。不思議だなあと思いました」と振り返る。
「律義な人で、この石もきっと元の場所にあった方が幸せだと思われたのだろう」

翌日の夕暮れ、野地さんは自転車で帰宅途中に、四万十川に架かる赤鉄橋から、小石をそっと落とした。
ポチャンという水音がした。その瞬間、野地さんの耳には「お帰り」という四万十川の石たちが、小石を出迎える声が聞こえた気がした。

◇手紙の詳しい内容は次の通り。

こんにちは。突然のご連絡で申し訳ございません。

昨年、四万十川に旅行に行った際に、河原の小石をひとつ持ち帰ってしまいました。大変申し訳ありません。
勝手ではありますが、同梱させていただきますので、お手数ですがお戻しいただけませんでしょうか。
本来なら自身で返しにあがらなければならないのですが、距離が遠くなかなか叶いません。
ご迷惑をおかけ申し訳ございませんが、何卒よろしくお願い申し上げます。

四万十川、とても素敵なところでした。また、ゆっくり訪れたいと思っています。


石が戻った四万十川と赤鉄橋
https://www.asahicom.jp/articles/images/c_AS20190117002399_comm.jpg