勢いはどこまで続くか――。

 居酒屋チェーン「串カツ田中」を運営する串カツ田中ホールディングスは1月15日、2018年11月期(2017年12月〜2018年11月期)決算を発表した。売上高は76億円、本業の儲けを示す営業利益は5.5億円だった。2018年6月にホールディングス化して連結決算となったため単純に比較できないが、上場した2016年以来3期連続の増収増益となった。

■「家族客」が業績を牽引

 串カツ田中といえば、2018年6月に約200ある店舗のほぼすべてで全面禁煙(一部店舗ではフロア分煙)に踏み切り、業界で大きな関心を集めた。外食業界ではファミレスなどが法制化に先駆けて禁煙化に取り組むものの、喫煙客の多い居酒屋チェーンで全面禁煙に舵を切ったのは同社が初めてだ。
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 社内では「絶対に売り上げが下がる」と不安視する声も上がったが、ふたを開けてみると禁煙化した2018年6月以降、7カ月間で既存店客数が前年を下回ったのは9月のみ。しかも、同月は台風の影響で苦戦する飲食チェーンが多い中での0.4%の減少にとどまった。8月、10月、12月には既存店の客数が前年同月比10%以上の高い伸びを見せた。

 顧客全体に占める「会社員・男性」グループの割合は7.0ポイント減少したが、禁煙を好感した「家族」客の割合が7.5ポイント増加した。特に、「小学生の子どもを連れた家族客の増加が顕著」(会社側)だという。「禁煙化感謝祭」や「ノンスモーキングチャレンジ」など禁煙を逆手に取ったキャンペーンを積極的に打ち出したことも功を奏した。

 小学生以下の顧客には、顧客自身が作るソフトクリームやたこ焼きを無料で提供。また、アルコール類が注文されないことから客単価は下がったが、それを補って余りある客数増を達成し、既存店は通期で2.6%の増収と計画を上回って着地した。人件費や出店増にともなう経費の増加が利益を圧迫したが、売り上げ増でカバーした。

 居酒屋チェーンでは異例の禁煙化に成功した串カツ田中だが、今2019年11月期(2018年12月〜2019年11月)も独自の戦略に力を入れる。その目玉が地方での出店だ。同社は今期、直営で33店、フランチャイズで31店の出店を予定するが、直営店の半数以上とフランチャイズの8割程度を関東圏以外に出店する見込みだ。

 現在は、同社の店舗の約半数が東京都下だ。国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、東京都での喫煙率18.3%に対して全国平均は19.8%と地方では喫煙率がやや高い傾向にある。地方店強化の方針は、その傾向に逆行しているようにも見えるが、それでも地方へ勢力を拡大するのはなぜか。

 串カツ田中ホールディングスの貫啓二社長は1月16日の決算説明会で、「熊本や仙台、北陸(福井、富山、新潟)、北海道の店舗ではすごい数字が上がっている」と話し、2018年にオープンした地方の店舗で手応えを感じていることを明かした。
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■「いちばんにやることに意味がある」

 地方では都市部と比べて世帯人数が多く、家族客の需要が大きい。ファミリー層を重要顧客と位置づけた同社の戦略が、地方でより効果を発揮したというわけだ。串カツ田中の串カツは1本100円〜120円(税抜き、以下同)が中心で、客単価が2400円ほどと低価格である点も、所得水準が都市部と比べて高くない地方でも受け入れられる大きな要因になっている。

 店舗数の増加に加え、メディアでも取り上げられる機会が増え、全国的に認知度が向上したことも後押しした。これには「いちばんにやることに意味がある」という同社の姿勢もプラス作用している。
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 全面禁煙のみならず、2017年2月から政府が「プレミアムフライデー」を奨励した際も、一足早く1月から営業時間の前倒しや割引キャンペーンを行い、注目を集めた。「一番に手掛けることでメディアでも話題になり、『串カツ田中はファミリーを大事にする会社』と日本中に宣言できる」(貫社長)。

以下ソース先で

1/20(日) 11:40
東洋経済オンライン
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190120-00261202-toyo-bus_all&;p=1