「東京がでっち上げる偽りの大阪像」
http://www.eonet.ne.jp/~0035/teratani.htm

 「大阪はね、ゴミゴミした街だと決まっているんだよ。映像をかえなさい」
 上司であるプロデューサーの I さんが、眼鏡の奥の鋭い目を光らせて言いました。
私は、開いた口がふさがりませんでした。平成元年の出来事です。

 その当時、私は東京の報道局で、ディレクターとして、短いドキュメンタリー番組の制作
をまかされていました。大阪で「花の万博」が開かれるということを紹介する企画で、総合
テレビの全国ネットの番組です。私は、大阪の良さを全国にアピールする良い機会だと
思い、大阪の美しい映像をふんだんに使いました。中ノ島から大阪ビジネスパーク、ベイ
エリアまで、それはまさに「水の都大阪」をイメージした、渾身の力作でした。

 その映像に、NHKの中枢たる東京報道局の上司が、いきなりクレームをつけたのです。
大阪のイメージに合わないから、通天閣や道頓堀といった、もっとわかりやすい映像にし
ろという、まるで情報操作まがいの命令です。私はこの瞬間、東京のマスコミの、大阪に
対する偏見と、ある種のコンプレックスを感じずにはいられませんでした。