2019年1月26日 7時0分
日本農業新聞
 東北ですし向けの米銘柄が脚光を浴びている。青森県黒石市では、栽培が途絶えた「ムツニシキ」が昨年復活。宮城県大崎市ではブランド米「ササニシキ」直系の「ささ結(むすび)」が2015年にデビューし、18年の作付面積は約100ヘクタールと3倍に拡大した。食味や食感の特徴を前面に、有利販売する戦略。需要が確実にあり、農家の所得確保につながっている。
個性前面、増産に拍車

 「ムツニシキ」は、粘りが少なく、あっさりとしていて米粒がしっかりしているのが特徴。すしのしゃりにぴったりと、県内のすし店から人気を集めていた。一時は2014ヘクタールまで拡大した。だが、収量に課題があるため、衰退。1998年には生産者がいなくなった。

 そんな中、市は「米の消費が減る中で生き残るには、付加価値を備えた個性的な米が重要。かつてすし店で人気だった特性に魅力を感じた」(農林課)と「ムツニシキ」に着目した。

 15年度に県の研究機関が保管していた同品種の種もみ360グラムを使い、市内の農家に栽培を委託。15〜17年度の3年間で種子を増やすなど生産体制を整えた。17年に品種登録を出願、18年1月に再登録された。

 18年度は7人が4・6ヘクタールで約20トンを生産。昨年11月1日の「すしの日」に合わせ、県内のすし店25カ所でデビューした。同品種を扱うすし店は、青森市や八戸市、弘前市など県内ほぼ全域に及ぶ。

 黒石市のすし店、美鈴では、しゃりに使う米を「ササニシキ」から全量、「ムツニシキ」に切り替えた。同店の代表、高橋遵司さん(63)は「ネタの味を引き立て、口の中でほぐれやすい。ふんわりとした甘味もあり、後味がいい」と高く評価する。

 黒石市で同品種を80アール手掛ける農家、佐藤拓郎さん(37)は「すし店に確実に売れるのが魅力。所得確保につながるので、需要があれば増産したい」と意気込む。

 「ささ結」も、15年度の本格デビュー以降、すし店の評価が高い。宮城県大崎市のすし店、君鮨(ずし)の代表、千葉君夫さん(70)は「ささ結は冷めてもおいしく、香りやつや、歯応えともに申し分ない。ネタのうまさを引き立てるしゃりだ」と強調する。

 同市は「東京のすし店などからも需要が高まり、ささ結の生産量は、増え続けている。今後もすし店への販路を広げたい」(農林振興課)と意欲的だ。

http://news.livedoor.com/lite/article_detail/15932334/
http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/2/9/29562_1606_73c9059b_7148c6f4.jpg