強制不妊 聴覚障害の女性が国を提訴 大阪地裁
毎日新聞 2019年1月30日 11時25分(最終更新 1月30日 11時25分)
https://mainichi.jp/articles/20190130/k00/00m/040/082000c

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提訴後、手話で記者会見する原告=大阪市北区で2019年1月30日午前10時18分、梅田麻衣子撮影

 旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強いられたとして、聴覚障害のある大阪府内の女性(70代)が30日、夫(同)と共に、国に計2200万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。
大阪市内で記者会見した女性は「障害を理由に不妊手術を受けさせるのは差別だ」と手話で訴えた。

 弁護団によると、旧法を巡る訴訟は全国7地裁で起こされており、聴覚障害者の提訴は4組目。

 訴状によると、夫婦はいずれも耳が聞こえず、70年に結婚。3年後に妊娠して帝王切開で出産したが、子どもは亡くなり、自身も高熱が続いて入院した。

 夫婦はその後も子どもを望んだが妊娠しなかった。不審に思った女性が母親に相談すると、入院時に不妊手術をしたと聞かされた。

 憲法が保障する自己決定権やリプロダクティブライツ(性と生殖に関する権利)を侵害されたなどと訴え、96年の旧法改正後も救済措置を怠ってきた国や国会の不作為を追及している。

 夫婦は旧法の存在を最近まで知らなかったが、聴覚障害を持つ他の夫婦が裁判を起こしたことを報道で知り、他の裁判も傍聴して提訴を決意したという。

 提訴後の記者会見で妻は「子どもを産んで2人で育てたかった。説明もなく手術を受けさせられ、すごくショックだった」と涙を拭った。

 夫も「望んだ子どもを持てず、悔しい気持ちを持ち続けてきた。国には謝罪してほしい」と訴えた。【戸上文恵】