がん治療と仕事の両立について、朝日新聞社が全国主要100社に聞いたところ、回答した74社のうち61社は自社の支援制度が整っていると考えていると答えた。治療の中心が入院から通院に変化する中、整っていると回答した企業でも、治療に通いやすい柔軟な働き方への支援は十分といえない実態も浮かんだ。

がんは、医療技術の進歩により生存率が向上。長く付き合う病に変化している。厚生労働省の調査によると、仕事をしながら通院するがん患者は36万5千人。1996年に46日だった平均在院日数は、2014年に19・9日に短縮。抗がん剤治療を通院で受けることも一般的になり、仕事の合間に治療できる柔軟な勤務体制の整備が求められている。

18年11、12月、郵送やメールで、がんになった従業員が治療や体調の変化に合わせて利用できる制度について尋ねた。

治療と仕事の両立のため活用できる制度の有無を聞くと、「十分整っている」「ある程度は整っている」と答えたのは計61社。具体的には「一定の賃金支給がある傷病休暇・休業」が51社。「失効有給休暇の積立制度」48社、「時差出勤制度」42社と続いた。

ただ患者側が求める働き方は十分ではない。1時間単位の休暇など柔軟な休暇制度は、16年度の内閣府の世論調査で、約半数が働き続けるために必要とした。朝日新聞の調査では、「時間単位の年次有給休暇」を導入するのは27社、「一日の所定労働時間を短縮する制度」は30社、「勤務中の流動的な休憩を認める」は14社だった。勤務中の休憩については、24社が「制度ではないが運用で個別に対応」と答えた。

最も課題と感じていることは、「治療内容が専門的過ぎて仕事への影響が予測しづらい」が17社と最多。休業中の賃金支給など企業側の金銭的負担をあげたのは8社にとどまった。

国立がん研究センターの若尾文彦・がん対策情報センター長は「充実している対策がある一方、ニーズが高いのに十分整っていない部分もある。定年延長や少子高齢化による人手不足といった社会の変化で、がんを含めた治療と仕事の両立支援の重要性はさらに高まる。社員が安心して働くことが会社全体の活性化にもつながるので取り組みを進めてほしい」と話す。(月舘彩子、山内深紗子)

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