資産家ジム・シモンズ氏が創業したヘッジファンドのルネサンス・テクノロジーズは、自社の従業員向けに税金面で優れた豪華な退職金口座を作っていたようだ。

同社従業員は、2012年にさかのぼる巧みな手法により、個人退職勘定(IRA)を通じて自社の名高い「メダリオン・ファンド」に投資できるようになった。IRAは税制面で優遇が受けられる私的口座で、一般の米国人が幅広く利用している。

ただ、一般の人が持つIRAとルネサンス従業員のIRAは異なる。屈指の運用成績を収めたヘッジファンドのメダリオン・ファンドに、一般の人はアクセスできない。米労働省への最近の届け出から、ルネサンス従業員のIRAで同ファンドが課税対象外の巨額の富を築いてきた様子を垣間見ることができる。ルネサンス従業員のIRAの資産は、17年後半の時点で6億6000万ドル(約720億円)超と、約5年間で8倍に膨らんだ計算になる。

この大幅な資産の増加は、ロスIRAと呼ばれる個人退職勘定に関する重要なルール変更をルネサンスがうまく利用したことにより生まれた。

ルネサンスの従業員はロスIRAを通じて、拠出時課税となるものの、その後は非課税ベースでメダリオンの目覚ましいリターンを享受することが可能。メダリオンの利益は短期トレーディングを通じて生まれることが多く、最高の税率が適用されるため、この仕組みは同ファンドのケースでは特に効果的だった。ロープス・アンド・グレーのパートナー、ジョシュ・リヒテンスタイン氏は、このIRAは「全ての従業員にとり確実な投資だった」と語った。

ルネサンスの外部広報担当者、ジョナサン・ガスサルター氏はコメントを控えた。

ルネサンスはまず10年に従業員向け確定拠出型年金(401k)制度を終了。これにより、従業員の年金資金を拠出時非課税のトラディショナルIRAにロールオーバー(移転)することが可能になった。従業員はその後、富裕層がトラディショナルIRAをロスIRAに変更できるようにするその年のルール改正を利用した。ルネサンスはその翌年、従業員がIRA資金をメダリオンに投資することを認めるよう労働省に申請。同省はこれを認め、12年1月に発効となった。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-02-04/PM9WM7SYF01S01