「植物、緊急信号のにおい物質で防御」 仕組み解明、東大チーム発表
毎日新聞 2019年2月4日 18時37分(最終更新 2月4日 20時22分)
https://mainichi.jp/articles/20190204/k00/00m/040/169000c

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におい物質を検知し、防御態勢をとるイメージ

 虫や病原体に襲われた植物が発した緊急信号の「におい物質」を周囲の他の植物が検知し、防御態勢をとる仕組みを解明したと、東京大大学院の東原和成(とうはらかずしげ)教授(農学生命科学)らのチームが発表した。
農作物栽培などで害虫防除や病気予防に役立つ可能性がある。成果は米科学誌ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー電子版に掲載された。


 植物は虫に襲われたことを周囲の植物に「におい」などで伝えることは知られていた。今回、分子レベルでこの仕組みが初めて明らかになった。

 チームは細胞を培養する技術が確立しているタバコで実験。アロマオイルに含まれる「β―カリオフィレン」などのにおい物質が入った水溶液にタバコの細胞を浸すと、害虫から身を守る遺伝子が働くことを発見。におい物質が何と結合するか調べたところ、既知のたんぱく質である「TOPLESS」と判明した。

 普段は防御に関係した遺伝子を覆っているが、におい物質に反応すると遺伝子から離れ、その機能を働かせると考えられる。この結果、植物では例えば、虫が嫌がる味に葉を変化させたり、虫の天敵を呼び寄せる物質を出したりするという。

 東原教授は「植物が発する“におい”を人工的に調節することで、害虫や病気に強い植物の栽培につなげたい」と話している。【荒木涼子】


ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー電子版
http://m.jbc.org/content/early/2018/12/28/jbc.RA118.005843.abstract