ヒトラーの映画の中で、総統の命令(フューラース・ベフェール)という言葉が何回か出てきて、
現場レベルで実施した場合のキチガイっぷりが描かれているが、それだけでは歴史的事実の
半分しか理解したことにならない。

もう半分の重要な事実とは、総統の命令はしばしば口頭のみで伝達されて、多くの場合何の
文書も作成されなかったということである。それはソ連軍が迫ってきて混乱していたからではなく、
1930年代に政権をとったときから、そうなのである。少なくともビスマルクの時代からあるドイツ
の役所の文書主義の伝統を廃して、スピーディーな意思決定を導入するというのがナチス党の
新機軸の一つであった。