読売新聞オンライン 2019/02/18 07:12
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190218-OYT1T50084/

 ツイッター上で、「野菜」との隠語で大麻の購入を持ちかける投稿が昨年以降、相次いでいる。
捜査関係者によると、密売のやり取りには、メッセージが完全消去されて証拠が残らない「消えるSNS」が使われているという。
関東信越厚生局麻薬取締部(麻取)と警察当局は、若者が多く利用するツイッターが薬物密売の温床になりつつあるとみて、監視を強化している。

 「都内で野菜、手押し可能」「海外直輸入で高品質」。ツイッターで、こうした投稿が急増したのは昨年夏頃からだ。
麻取によると、「野菜」は大麻の隠語で、「手押し」は対面での取引を意味する。
投稿にはハッシュタグ(検索用ワード)が付けられ、誰でも簡単に閲覧ができる状態だ。
1グラムあたり5000円前後が相場という。

 捜査関係者によると、大麻密売グループは、他人名義のスマートフォンなどでツイッターのアカウントを作成。
受け渡し方法などのやり取りは、送受信したメッセージが完全消去される「Wickr(ウィッカー)」などの「消えるSNS」を使っているという。
相手にも消えるSNSのアプリをインストールさせることで、密売のやり取りは完全消去される。
最新のデジタルフォレンジック(鑑識技術)でも、メッセージを復元することは不可能だ。

 決済には匿名性の高い「ビットコイン」などの仮想通貨が使われ、警察幹部は「従来よりも捜査が難しくなっている」と話す。
麻取や警察当局は、購入者の摘発を進めているが、投稿はなくならないのが現状だ。

 「野菜」と称して、乾燥大麻の写真を投稿した関西地方の20歳代の男は読売新聞の取材に対し、
「これまで何度もツイッターに乾燥大麻の写真を投稿してきたが、削除されたことはない。
ツイッターは若者の利用者が多いので、広告に便利だ」と言い切った。

 国の薬物乱用対策推進会議によると、2017年の大麻の摘発者数は過去最多の3218人に上り、このうち半数の1519人を未成年と20歳代の若年層が占めた。
捜査幹部は「密売の場が、インターネット掲示板から、ツイッターに移行している」と指摘する。

 ツイッター社は、「野菜」の隠語で大麻の密売を持ちかける投稿が相次いでいることについて
「お答えするのが難しい」と明確な回答を避け、「世界中で現地の法律を尊重し、法的手続きに対応する」としている。

 取引内容残らず 「消えるSNS」警戒

 違法薬物の売買や振り込め詐欺などの組織犯罪に悪用されている「消えるSNS」を巡っては、アプリを隠す特殊なスマートフォンの存在も明らかになっている。
消えるSNSは、組織犯罪の捜査の障壁になっており、警察当局などは警戒を強めている。

 関東信越厚生局麻薬取締部(麻取)が昨年、摘発したマレーシアからの覚醒剤密輸事件では、覚醒剤取締法違反容疑で逮捕された台湾人の男2人が、
「EncroChat(エンクロチャット)」と呼ばれる特殊なスマホを使っていた。

 通常画面にはアプリの表示はないが、男の1人が「決められた手順でスマホを起動するとアプリが出てくる」と供述。
麻取が男の説明通りにスマホの電源と音量ボタンを同時に押して「裏起動」させると、画面に消えるSNSのアプリが現れた。
しかし、取引内容を示すメッセージは自動で完全消去されていたという。

 男は「スマホは台湾で買った」と供述した。
エンクロチャットは、東南アジアなどでも出回っているといい、捜査当局は外国捜査機関との情報交換を進めている。