https://www.sankei.com/smp/west/news/190218/wst1902180013-s1.html

働く人のメンタルヘルスが社会問題化する中、滋賀大大学院(大津市平津)の学生らが、毛髪に含まれるホルモンを計測して行うストレスチェックの事業化に取り組んでいる。1月には同大学初の大学発ベンチャー企業「イヴケア」を設立。手軽にできるストレスチェックとして、3年後のサービス開始に向けて準備を進めている。
イヴケアは同大学院教育学研究科修士1年の五十棲(いそずみ)計さん(23)が社長に、役員には教育学部の芦谷道子教授と大平雅子准教授がそれぞれ就き、1月11日に設立した。大学から同大発ベンチャーの第1号として認定され、大学施設の使用許可などの支援を受けている。
毛髪によるストレスチェックは、依頼者から送られてきた毛髪を薬品に浸し、含まれる物質を抽出。ストレスを感じると分泌される数種類のホルモンの量などから、ストレス状態を判定する仕組みで、毛髪を受け取ってから5日〜1週間で分析結果を伝える。

現在のストレスチェックは血液や尿を用いる手法が主流で、毛髪を用いて正確な分析をしようとすると、数百本の毛髪が必要とされていた。五十棲さんらは抽出方法などを工夫し、必要な毛髪の量を数本程度に減らすことに成功。負担が少なく、手軽に客観的な検査ができるようになった。

人間の毛髪は1カ月に1センチ程度伸びるといい、根本に近い部分を分析すれば直近の、先端近くを分析すれば過去のストレス状態が分かり、一度の検査で依頼者の感じたストレスの推移が分析できる。企業などでのストレスチェックに活用してもらうことを想定しており、今後は分析結果を踏まえてストレスに対処する方法を提言するなどのサービスにも取り組む予定だ。

五十棲さんらの当面の目標は、得られたホルモン量の測定結果からストレス状態を判定する基準の確立。イヴケア設立後、企業から共同研究に向けた申し出もあるといい、企業の力も借りながら、3年後のサービス開始を目指している。

大学院で教育現場におけるいじめ問題などをテーマに研究に取り組む五十棲さんは「いじめに苦しむ子供たちを含め、自分の抱えている悩みを言い出せない人も多い」と指摘。「手軽にストレスチェックを受けられるようにすることで、隠れた悩みを発見する手助けになれば」と話している。