川崎市の臨海部で健康・医療分野の研究施設を集積させる地区として開発が進められている「キングスカイフロント」について、市は1月から、市内を走る路線バスにラッピング広告を施し、名称浸透にてこ入れを図り始めた。呼称決定から約8年。エリアの知名度はまだ低い。世界をリードする技術研究が行われている現状を知らしめ、住民らの誇りや事業活性化につなげたい考えだ。

 「世界が高齢化社会という課題に直面するなか、川崎市では健康・医療分野の最先端の研究開発が行われている。住民や子供たちに、市民であることを誇りに思ってもらいたい」。市臨海部国際戦略本部の山川浩己担当課長はこう話し、目を輝かせた。

 ■先進的デザイン

 キングスカイフロントは、平成20年の整備方針策定以降、土地の区画整理や企業誘致が進み、健康・医療分野の一大研究拠点として、全貌が明らかになりつつある。ただ、市内での知名度はいま一つだ。

 山川担当課長は「縦長の川崎市で、臨海部から遠い中・北部エリアの人はおろか、地区を擁する南部エリアでさえ、住民にその存在をよく知られていない」と嘆き、ラッピングバスの運行について、「まずは近隣の南部エリアから認識を広めていきたい」と意気込んでいる。

 今回、ラッピングを施したのは、川崎鶴見臨港バスが運行する路線バス1台。JR川崎駅東口や京急線の産業道路駅を発着し、キングスカイフロントなど臨海部方面を走行する。

 車体はブルーを基調に、側面や背面に「KINGSKYFRONT」「川崎の南端は世界の最先端です」などと印字。「先進的なデザインとなった。川崎駅東口ターミナルでの停車中など、バス待ち中の多くの人の目につくだろう」(山川担当課長)として、広告効果に期待を寄せている。当面の運行は3月末までだが、さらに1年先までの運行も視野に入れているという。

 ■変貌する臨海部

 山川担当課長が「公害のイメージが根強いが、実際は様変わりしつつある」と話すように、市の臨海部では著しい開発が進んでいる。なかでもキングスカイフロントは、市が立地企業などとともに30年後の臨海部の姿を見据えて策定した「臨海部ビジョン」の中核事業だ。発展にかける関係者の思い入れは強い。

 川崎区殿町3丁目地区をキングスカイフロントと命名したのが23年3月。約40ヘクタールの広い土地に健康・医療分野の企業や研究機関を誘致し始め、現在60以上の企業・機関が進出している。いまも地区の開発は続いている。

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 ■緑地創出構想も

 同地区の“売り”は、交通の利便性。連絡道路は対岸でも同様に開発が進む羽田空港の隣接地区と直結するほか、羽田空港に徒歩で行くことも可能となる。

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 【キングスカイフロント】

 川崎市の多摩川下流部にある殿町で、市が健康・医療分野の研究拠点として開発を進めている約40ヘクタールの地区。国際戦略総合特区などに指定され、税制支援が受けられる。名称の「キング」は「Kawasaki INnovation Gateway」の頭文字のほか、殿町の「殿」から「KING(王)」を連想することに由来。「スカイフロント」は羽田空港との近さや世界とのつながりを示すという。

2/19(火) 22:14
産経新聞
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