>>169

また日本では以下の理由での転勤命令は

-業務上の必要性が存しない場合
-不当な動機・目的をもってなされたものである場合(退職勧奨拒否後の異動命令など)
-労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等
[39]

人事権の濫用とみなされ、転勤の拒否をした場合に会社が懲戒解雇をしたとしても無効となる。特に通常甘受すべき程度を著しく超える不利益とは

-単身赴任手当や家族と会うための交通費の支給
-社宅の提供
-保育介護問題への配慮
-配偶者の就職の斡旋等

がなされているかが判断基準となる。これらの条件を考慮すれば正規社員に対して懲罰的な異動命令をすることは困難
であり、正規社員の待遇や雇用保護だけが優先される事由となる合理的説明とはならない。異動や転勤は能力開発や
社内人脈の強化でプラスの側面があることや、転勤を課すことは企業にとっても該当社員の人件費・福利厚生(社宅、
交通費)が増すことになることを考えると、正規社員の異動や転勤は法的に保護対象といえ、論点となるためには、人
事権の濫用が法的に認められている場合などに限るが、現状はそうした濫用は違法であり、拒否することができる。

転勤・異動にかんする判例には

-フジシール事件 大阪地判平12.8.28 労判793-13
-プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト・インク(本訴)事件 神戸地判平16.8.31 労判880-52
-マリンクロットメディカル事件 東京地決平7.3.31 労判680-75
-朝日火災海上保険事件 東京地決平4.6.23 労判613-31
-日本電気事件 東京地判昭3.8.31 判時539-15
-北海道コカ・コーラボトリング事件 札幌地決平9.7.23 労判723-62
-明治図書出版事件 東京地決平14.12.27 労判861-69
-日本レストランシステム事件 大阪高判平17.1.25 労判890-27

等がある。