■A氏の意見陳述の要旨

 私はこの事件の被害者です。
この事件はとてもシンプルで、男性外科医(陳述の中では、男性外科医の名字)が私の胸を舐めていたので警察を呼んで、
舐めた部分を拭き取ってもらったものと、男性外科医のDNAが一致したので逮捕され、起訴されたというだけ。
言うまでもなくこの事件の被害者は私一人。
裁判でさまざまな証言を聞いて、私は柳原病院を選んだことを心の底から後悔している。

 事件が起こったときに最初に考えたのは、事実を訴えたらどうなるのかということ。
母にかかる心労、柳原病院にかかる迷惑、おかしいと思うかもしれないが男性外科医の今後。
あり得ないことすぎて、誰が信じてくれるだろうかと半信半疑だった。
男性外科医が真面目な医師だと信じていたから、ショックだった。

 男性外科医が胸を舐めているのを確認したとき、私は絶対証拠を残さなくてはならないと強く決意した。
性犯罪は確固たる証拠がなければ警察は取り合ってくれない。痴漢程度であれば犯人も捜してくれない。
見付かっても証拠がなければ逮捕してくれない。ほぼ泣き寝入りという現実を私は痛いほど思い知らされてきた。

 男性外科医の唾液こそが私の証言を裏付ける証拠になると思い、DNAが出なければ私は頭のおかしい患者にされてしまうと腹をくくった。
だから本当は気持ち悪くてたまらなかったが、唾液をそのままにしていた。
警察がDNAを採取するのを分かっていたはずなのに、柳原病院の看護師達は何度も私の身体を拭こうとした。今となっては証拠隠滅をしたかったのだと思う。

 DNAが出るまでは警察も半信半疑だった。事件の1カ月後、DNAが出てやっと信じてくれた。
法廷で私が受けた多大な苦痛について、本当に嫌な思いをした。
私の職業について、弁護側から「性的に過激な職業をしている」と説明されたが、そのような職業ではない。
上司が証言したようにモデルとしては洋服も着物も水着も着ている。それ以外にもたくさんしている。
せん妄にしたいために私の職業を性的にいやらしいものにしてしまおうという魂胆だろう。職業に誇りを持っている。
弁護側はあまりにも低俗な発想で、心から軽蔑した。
裁判に必要ない個人情報も次々と晒された。既往歴やブログは関係ない。

 弁護側は傍聴席に見えるように、私の胸が露わになっている写真を大画面で映そうとした。
女性の裸を一般に公開するのは常識的ではない。被害者の秘匿が全く行われておらず、法廷を舞台とした公開処刑だと思った。

 男性外科医をずっと信頼してきた。舐めているのに気付いた時には本当に信じられない気持ちでいっぱいだった。
法廷での前立ち医師の証言を聞いて、男性外科医は誠意のある人、まじめに患者に向き合っている医師ではないと分かった。
手術中に「こんなに気を遣う手術は美容整形にやってほしいぐらいだ」と言ったそうだが、
全身麻酔の患者を前に良くもそんなことが言えるものだとあきれる。
乳腺腫瘍で定期的に通院しており、美容整形を頼んだわけではない。
女性が胸を切るのに、整容性を気にしない人がいるのでしょうか。あなたは私の手術をしたくなかったのか。
面倒な手術だから、だからお礼に胸を舐めて良いと思ったのではないのでしょうか。