自衛官募集のための住民情報の提供をめぐり、山口県下関市は今春から、住民基本台帳の閲覧にとどめていた従来の取り扱いを変え、紙の名簿を提供する方針を固めた。同市は、「6割以上が協力を拒否している」と発言した安倍晋三首相の地元。政府は自治体への働きかけを強める方針で市の対応変更もこうした流れに沿った形だ。

 市によると、新年度に18歳になる住民の情報について、自衛隊山口地方協力本部(山口市)が例年、3月に印刷物などでの提供を依頼。4月には住民基本台帳の閲覧を申請している。市はこれまで、協力本部が市民サービス課で「氏名、生年月日、住所、性別」の4項目を閲覧し、市が用意する様式の紙に書き写すことは認めていた。

 今後の対応について尋ねた朝日新聞の取材に対し、前田晋太郎市長は20日にコメントを出した。その中で「自衛隊所在地である下関市は、これまでも関係法令にのっとり適切に協力してきた。協力本部からの依頼には紙媒体で提供し、今後も円滑な協力に努めてまいりたい」として、紙での提供方針を示した。

 前田市長は安倍首相の下関事務所の元秘書で、2017年の市長選で初当選した。市幹部によると、安倍首相を含め自民党所属の国会議員による働きかけなどはないという。(白石昌幸)

2019年2月22日14時30分
朝日新聞デジタル
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