帝国海軍の潜水艦は聴音機の性能が悪いため潜望鏡でしか敵を捕捉できず
活躍は期待はずれ。その中で伊19木梨艦長はお手柄でした(・∀・)
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★『空母ワスプ撃沈の凱歌』 渋谷郁男

木梨艦長はなおしばらく隠忍自重、肉薄をつづけ、今や彼我の距離900メートルとなった。
ついに最適の射程内に入った。今だ。方位角右50度、絶好の射点を得て、魚雷全射線(6本)が発射された。
満を持した必殺の魚雷である。時に11時45分。
日本が世界に誇る無航跡酸素魚雷は、われらの悲願をこめて、まっしぐらに突っ走ったに違いない。
一同かたずを飲んで待つうちに、ズシンという手ごたえがあって、まぎれもない命中音4発を聞いた。

当たった。よかった。なんという爽快さ。一同思わず万歳を叫ぼうとして、あわてて声を飲んだ。
敵に聴知されるかどうかわからないが、とにかく無音潜航である。
魚雷発射でこちらの存在を知らせたからには、今度はこちらが一方的に攻撃を受ける番だ。
敵空母に魚雷を命中させた以上、こちらも無事にはすまされない。
あるいは撃沈されるかも知れない。戦果の確認が出来ないまま、艦を運命を共にするのは残念であるが、それもいたしかたない。
これが潜水艦の宿命というものだ。

本艦は深度80メートルに潜航し、敵空母の航跡の下に隠れた。魚雷命中から6分後に敵爆雷1弾目の爆発音を聞いた。
つづいて第2弾、第3弾と本艦の各方向から爆発音が聞こえてきて、同時に震動を与える。
数隻の敵駆逐艦が本艦の周囲をぐるっと取り巻いて、いっせいに爆雷攻撃を行っていることがわかる。
艦内の防水扉は魚雷戦用意で厳重に密閉され、通風も停止されているので、空気はしだいににごり、温度はますます上昇してくる。
40度の高温の中で、電動機室にじっと座って、爆雷1発受けるたびに隔壁に印をつけていった。
まったく敵の攻撃がやんだのは17時15分ごろであった。
隔壁に書いた正の字によれば、爆雷85発を受けたことになる。
 『完本・太平洋戦争』より

【補足】
 イ19号による空母ワスプ撃沈は1942/09/15ガタルカナル島近く。酸素魚雷6本を発射しワスプに3発、
 偶然近くにいた戦艦ノースキャロライナに1発、駆逐艦オブライエンに命中。駆逐艦はその後沈没。
 その後は1943年から通商破壊任務に就き7千トン級貨物船を4隻撃沈した。