検出された唾液とやらも、唾液かどうかすらわからないからね


弁護側証人として、東邦大学医学部法医学教授の黒崎久仁彦氏への尋問が行われた。黒崎氏は、法医学の中でもDNA鑑定を専門としており、今回は弁護側の検証実験を行った。

 最初にアミラーゼ反応について、「あくまでも『アミラーゼを含む何らかの物質』の存在が確認されたにすぎず、「唾液」であることが証明されたわけではない」と指摘した。
ブルースターチアガロース平板法では、
(1)鋭敏度が高い、
(2)特異度が低い、
(3)個人識別ができない――と説明し、本件では男性外科医が触診をした際に付着したり、手術説明をした際に唾液の飛沫が飛んだ可能性があると指摘。
1.612 ng/µLというDNA定量に関連して、舐める以外の付着の可能性については、唾液の飛沫に口腔粘膜由来細胞塊が含まれたり、触診により細胞が乳頭に付着したりした可能性があると指摘した。
どちらも弁護側検証実験がそれを裏付けると述べた。

 黒崎氏は
(1)生唾測定実験、
(2)乳頭舐め実験、
(3)乳頭触診実験、
(4)指先DNA量検証実験、
(5)飛沫測定実験――を行っている。

 生唾測定実験では、男性外科医の唾液を3回採取し、1カ月にDNA量を測定。0.555ng/µLから5.053ng/µLまで定量値に大きなばらつきがあった。

 乳頭舐め実験では、男性外科医がベッドに横たわる4人のモデル女性の左乳首を5分間舐め、モデル女性が2時間半横たわったのち、付着物を採取した。DNA量は0.005 ng/µLから0.122 ng/µLだった。

 乳頭触診実験では、男性外科医がベッドに横たわる3人のモデル女性の左乳首を5分間触診し、モデル女性が2時間半横たわったのち、付着物を採取した。DNA量は0.005 ng/µLから0.087 ng/µLだった。

 指先DNA量検証実験では、男性外科医が3本の指で濡らしたガーゼを揉み、付着物を採取した。
2回行われており、最初はDNA量が0.101 ng/µLと11.152 ng/µLと大きなばらつきがあった。
2回目は抜き打ちで黒崎氏が男性外科医の勤務先の診察室を訪問し、説明をしてその場で試験を行った。
説明の様子は撮影しており、法廷で上映した。
DNA量は0.082 ng/µLから13.373 ng/µLと大きなばらつきが見られた。
いずれも1時間でアミラーゼ反応の陽性反応が確認された。

 飛沫測定試験では9枚のガラスの上で、男性外科医が2分26秒間、術前説明を行った。
5センチ四方ごとにガーゼで拭き取り付着物を採取した。肉眼で確認できる飛沫はなかったが、最大で0.002 ng/µLがあった。