男性外科医が胸を舐めているのを確認したとき、私は絶対証拠を
残さなくてはならないと強く決意した。性犯罪は確固たる証拠が
なければ警察は取り合ってくれない。痴漢程度であれば犯人も
捜してくれない。見付かっても証拠がなければ逮捕してくれない。
ほぼ泣き寝入りという現実を私は痛いほど思い知らされてきた。

 男性外科医の唾液こそが私の証言を裏付ける証拠になると思い、
DNAが出なければ私は頭のおかしい患者にされてしまうと腹をくくった。
だから本当は気持ち悪くてたまらなかったが、唾液をそのままにしていた。
警察がDNAを採取するのを分かっていたはずなのに、柳原病院の看護師達は
何度も私の身体を拭こうとした。今となっては証拠隠滅をしたかったのだと思う。