エ 小括

上記イのとおり、Aの証言にはその信用性に疑問を生じさせる方向に作用する
事情がないとはいえないが、上記イで検討したもののうち【1】の点は、Aの証言
の核心部分に直ちに影響を与えるものとはいえないし、【2】の点も、十分に留意
すべき点であるとはいえ、犯罪現象は一定の異常な状況下で発生することも稀
ではないことからすれば、Aの証言の信用性を決定的に否定する事情とはいえない。

また、上記ウのとおり、エピソードの詳細等に関するC看護師の証言は信用し難い
ことも、信用性の裏付けが1つ減るというだけのことであって、Aの証言の信用性に
直ちに影響を与えない。他方で、上記アのとおり、Aの証言の信用性を肯定する
方向に作用する事情も少なくない。そうすると、ここまで検討した事情だけでは、
Aの証言の信用性はなお肯定されるとも思われる。