熊本市の女性市議(43)が2016、17年度に2回の出張でベビーシッターを同行させ、旅費を政務活動費(政活費)から支出していたことがわかった。支出を禁じる規定はないが、議会事務局は「議員本人以外の旅費は想定していない」と疑問視。専門家は「女性の政治参加を巡って一石を投じる問題で、今後議論が必要」としている。

熊本市議会の政活費は1人当たり年240万円が支給される。収支報告書によると、市議は17年1月、東京や埼玉で開かれた「障害者の自立と政治参加をすすめるネットワーク総会」に長女(当時3歳)と3泊4日で参加。長男を妊娠中で「議員をサポートするため」としてベビーシッターを同行させ、シッターの航空券代や宿泊費など少なくとも4万7900円を政活費から支出した。

 同年12月には8か月の長男とベビーシッターを連れ、東京で開かれた「議会における『働き方改革』を進め、社会を変える会」に1泊2日で出席。シッターの航空券代と宿泊費計5万3600円を支出した。

 市の政活費使途基準では「議員が研修会や講演会に参加するために要する経費」の支出が認められ、同行者に関する規定はない。議会事務局は「議員本人の政務活動に対する費用であり、同行者の旅費を支出するのは不適切」とした上で、「最後は議員の判断」と指摘したという。

 全国市議会議長会によると、身体に障害のある議員の同行者に政活費支出を認める議会はあるものの、「シッターの旅費を出した例は聞いたことがない」としている。

 市議は読売新聞の取材に対し、「2回とも授乳期間だったので子どもを置いていけなかった。賛否両論あると思うが、若い女性議員を増やしていく環境作りのため、あえて支出した」と説明した。熊本市議会に育休制度はなく、議員活動に関心のある大学生らにシッターを依頼して子どもの世話などをしてもらったという。

 総務省によると、全地方議員に占める女性の割合(2017年末)は13%にとどまる。一方、昨年5月に「政治分野における男女共同参画推進法」が施行され、女性の政治参加を進める機運は高まっている。

 昨年8月には地方議員約30人が「子育て議員連盟」を設立。在職中に2児を出産し、授乳中は遠出の視察を控えたという共同代表の永野裕子・東京都豊島区議(46)は熊本市議の支出について、「許容されていいと思うが、環境整備が必要だ」と語る。

 約20年前から子連れ出勤を認めている授乳服メーカー・モーハウス(茨城県つくば市)の光畑由佳代表は「議員にしかできない仕事であれば、シッターの同行費を認めていいのでは」と理解を示す。

 シッター利用料の一部を補助する企業は増えている。サントリーホールディングス(大阪市)は社員の急な出張の際にも補助。一方でシッターの同行旅費に関する規定はなく、全国保育サービス協会(東京)もシッターの旅費まで出す企業は把握していないという。

 全国市民オンブズマン連絡会議(名古屋市)事務局長の新海聡弁護士は「政活費は税金で、使途が限定されるのは当然だ。子どもを同伴する働き方はあっていいと思うが、政務活動とは無関係であり、私費で出すべきだった」と話す。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20190319-OYT1T50149/
熊本市議で女性は3名
年齢が一致するのは緒方夕佳氏のみ
1975年8月1日生まれ
http://kumamoto-shigikai.jp/namelist/pub/detail.aspx?c_id=3&;mem_id=93&lsttype=1