2019.3.19 06:30
米空軍が極秘裏に開発を進めていた無人戦闘機「XQ−58Aヴァルキリー」が初飛行に成功したことが3月6日に発表された。秘密のベールに包まれていた無人機はドローンの範疇(はんちゅう)を超え、いずれ「ロボット戦闘機」とでも言うべき性能を持つことになるという。米海軍でも有人の戦闘機は無くなっていくとの見方が支配的で、近い将来に戦闘機の概念が変わりそうだ。(岡田敏彦)

 戦場の女神

 XQ−58Aヴァルキリーは3月5日、米アリゾナ州の試験場で76分間の初飛行を実施した。米空軍研究開発本部と米防衛産業大手クラトス社が2年半をかけて開発していた。同本部などが明らかにした同機の概要によると、飛行可能距離は2000マイル(約3200キロ)で、亜音速機だとしている。

ヴァルキリーは北欧神話の女神「ワルキューレ」の英語読みで、戦場で生者と死者を定める神とされる。

 現在、米軍ではプレデターやリーパー、グローバルホークといった亜音速の無人機を実際に運用しているが、その用途は偵察と、少量の爆弾やミサイルによる限定的な地上攻撃にとどまっている。操縦については目的地への往復はほぼ自動だが、攻撃などの任務遂行時は陸上の基地から遠隔操作で行っている。

 一方、ヴァルキリーはこうした従来の無人機を凌ぐ性能を持つことが確実とされている。最も特徴的なのは、「忠実なるウイングマン(僚機)」になるとされる点だ。

 米軍事サイト「WAR ZONE」などでは、ヴァルキリーは有人機の指揮によって飛行するとしており、時に隔靴掻痒(かくかそうよう)となりかねない遠隔地からの操縦とは一線を画すという。

 同僚は機械

 機体は敵レーダーに探知されにくいステルス性を持っており、その能力は偵察や限定的地上攻撃といった従来の無人機任務に加え、電子戦支援能力も持たせる方向で開発が進んでいる。特に地上攻撃は、敵勢力の対空砲火や地対空ミサイルによる反撃を受ける危険性があり、こうした任務を任せられる“僚機”がいるのは心強い。

 また敵のレーダーや通信を攪乱する電子戦においては、先頃全機退役したEA−6Bプラウラー(4人乗り組み)や、その後継として現在配備が進む新型電子戦機EA−18Gグラウラー(2人乗り)といった、パイロット以外に電子戦機材を扱う専門士官が乗り組んだ「専用の機体」が必要だったが、これを無人機で置き換えられるなら作戦の柔軟性が飛躍的に向上する。貴重な電子戦機を攻撃部隊間で「取り合い」をしなくて済むメリットは大きい。だが、偵察や攻撃を行うだけでは、人の相棒たる僚機扱いできるものではない。実はヴァルキリーにはもうひとつの斬新な計画が絡んでいる。
https://www.sankei.com/smp/premium/news/190319/prm1903190007-s1.html
https://youtu.be/QrJmG1g4mFI
https://assets-media--platform-com.cdn.ampproject.org/ii/w1000/s/assets.media-platform.com/gizmodo/dist/images/2019/03/11/190312_valkyrie-w960.jpg