https://news.goo.ne.jp/article/forbesjapan/business/forbesjapan-26226.html
ロシアから日本を訪れる観光客が増えている。2018年の訪日ロシア人数は、前年比22.7%増の9万4800人(日本政府観光局)で、欧米諸国の中では伸び率がいちばん高かった。逆に昨年ロシアを訪れた日本人は6万人といわれているので、すでに「入超」になっている。

年間3000万人を超えた訪日外国人だが、米国や豪州を含む欧米からは全体の10分の1(12%)を占めているに過ぎず、近隣アジアからの訪日客に比べれば圧倒的に少ない(欧州からでは最多の英国で33万4000人)。それでも、2017年に日本政府がロシア人に対するビザ緩和を実施したため、ロシアからの観光客の数は伸びているようだ。

ウラジオストクから成田までのフライト時間は2時間20分と、ロシアは日本に最も近い欧州の国ではあるが、これまで日本人にとってもロシア人にとっても、お互い「近くて遠い国」だった。

とはいえ、極東ロシアの人たちは親日的なことで知られている。背景には、1990年代のソ連崩壊後、彼らは経済的苦境に陥ったが、極東ロシアの人たちは地理的近さから、日本との中古車販売などの民間貿易を通して日々の生活をしのいできた経緯があり、日本の豊かさや安定した社会を知り、日本人に対して好意的な見方を持つ人が多いのだ。条件がさらに整えば、多くのロシア人が日本を訪れてくれるだろう。

■高まる日本への関心、なぜ?

ロシアで発行されている隔月刊のカルチャー雑誌「KIMONO」の副編集長で、日本在住のアナスタシーア・ストレブコーワさんは、日本を訪れるロシア人が増えている理由についてこう語る。

「ひとつの理由は日本側の努力だと思う。最近、モスクワに日本各地の地方自治体が観光PRのため訪れるようになった。一方、ロシア人はNATOからの制裁もあり、旅行先もヨーロッパではなく、アジアに目が向いているところがある。加えて、日本は以前に比べオープンになってきたとロシア人は感じている。ここ数年、日露首脳会談も増え、プーチン大統領が日本をよく訪れるようになったことはニュースでも報じられていることから、日本に対するロシア人の関心が以前より高まっているのは確かだ」

では、日本を訪れるロシア人観光客とはどんな人たちなのだろうか。

ロシア人はたいてい最低2週間くらいビーチに滞在し、特別何をするでもなく、のんびり過ごす。そんな休暇のスタイルを好むという。ロシアで出会った人たちと話をしていると、家族でタイやベトナムに行った写真を見せられることが多い。

だが、日本はロシア人にとってリゾート的な位置付けの国ではない。2000年代中頃、原油価格の高騰で好況を迎えたロシアの富裕層が銀座の百貨店で数千万円単位の買い物をしたと騒がれたことがあったが、もうそんな時代でもない。いま日本に行きたいと考えているのは、日本の文化を正当に評価している、ごく普通のロシア人だといってよい。

「日本の観光コンテンツの水準はロシアに比べてずっと高いと思う。どの地方に行っても観るべきもの、やるべきおもしろいことがある。ミシュランの星付きレストランが多いことも、ロシア人は知っている」

そう日本を高く評価するストレブコーワさんだが、ロシア人にとって日本はまだ旅行費用の高い国であること。そして、日本に関する情報が圧倒的に足りないことが目下の課題だという。

「私がよく日本人から言われるのは、ロシアは寒い? ウォッカが好き? そんなステレオタイプな質問ばかり。同じように、ロシアでも、日本といえば、いまだにアニメやマンガ、サムライ、芸者というイメージしかない。最近はロシア人のブロガーもいて、それぞれ日本のことを発信しているが、内容はバラバラで、日本のいまを的確に伝える情報は少ないと思う」