「尾根管理人」黒沢さん、日航墜落追悼の桜初訪問へ
[2019年3月24日20時3分]
https://www.nikkansports.com/general/news/201903240000905.html

1985年の日航ジャンボ機墜落事故で亡くなった520人の追悼に多くの桜が植えられた大津市の古刹(こさつ)石山寺を、事故現場「御巣鷹の尾根」(群馬県上野村)を管理する黒沢完一さん(75)が25日、初めて訪れる。
2006年に2代目管理人となり、尾根に並ぶ数百の墓標や登山道の清掃、整備に汗を流す。当日は遺族らと桜を眺め交流する予定で「この仕事をしてきたからこそ見たかった。新しいつながりを大事にしたい」と話す。

石山寺は奈良時代に建立されたと伝えられ多くの貴重な文化財を所蔵。
犠牲となった能仁千延子さん(当時=22)の姉で、寺の現座主と結婚した鷲尾博子さん(63)らが「亡くなった千延子らに重ね合わせ、美しい花を咲かせて」と願い、犠牲者数と同じ520本のソメイヨシノなどの苗木を事故後まもなく境内に植えた。動物の食害などを免れて成長した約280本が今年も咲いた。

大学を出て就職した年の夏、帰らぬ人となった千延子さん。植樹は昨年亡くなった母能仁怜子さんが発案した。怜子さんが生前、桜の木々を抜けて山の上のお堂へ歩く千延子さんの夢を見たことから、これらは「夢の桜」とも呼ばれるという。

黒沢さんは「ご遺族とのつながりがあったからこそ、今までやってこられた。遠くてなかなか尾根に来られないだろうから写真だけでも」と、尾根で撮った千延子さんの墓標の写真を持参する。

黒沢さんは村で生まれ育ち、トラック運転手や電気工事会社経営に従事した。慰霊登山のバスの運転を手伝ったことを機に、村の依頼で管理人に。最初は遺族の顔も分からず手探りで始めた。
遺族の高齢化に伴い、標高約1540メートルの尾根に登りやすいように手すり設置や階段整備に取り組む。「みんな孫の話が多い。悲惨な事故の話ばかりでなく前を向いて生きている」と感じる日々だ。

博子さんは「事故時はつらい気持ちばかりで思い至らなかったが、村をはじめ群馬の皆さんに支えられてきた。お礼を伝えたい」と、黒沢さん来訪を心待ちにしている。(共同)