2019.04.03
東京農業⼤学・⽣物産業学研究科(北海道網⾛市)、千葉県⽴中央博物館、⾸都⼤学東京・都市環境科学研究科、NPO 法⼈「森は海の恋⼈」(宮城県気仙沼市)からなる研究グループが、気仙沼市の河川において、⼗脚⽬甲殻類(エビ類)の新種を発⾒し、国際専⾨誌 Zootaxaで公表されました。

⽇本国内で“川えび”と称される淡⽔性のエビ類のうち、テナガエビ科にはスジエビ属とテナガエビ属が知られています。これまでに国内の淡⽔域に⽣息しているスジエビ属はスジエビ Palaemon paucidens 1 種のみでしたので(外来種を除く)、この新種は2種⽬の淡⽔性スジエビ類となります。分布域が東北や北海道にあることから、本新種をキタノスジエビ Palaemon septemtrionalis と命名しました。

本研究の成果は、進化的観点、および保全的観点から興味深い発⾒でもあります。新種キタノスジエビは地理的に広く分布していますが、少なくとも今回調査した宮城県気仙沼市周辺の複数の河川では、本新種が⽣息する河川は限られていました。つまり、新種キタノスジエビの地域的な分布には、河川環境の性質が関係していることが推察されます。なぜ、このような分布様式になったかについては、本種の進化的背景も含めて⼤きな疑問です。また、現在調査中ですが、この新種は⽣活史の一時期をやや塩分のある汽⽔域で過ごすため、河⼝域の湿地の保全状態との関係も推察されます。したがって、新種キタノスジエビの⽣態特性は、今後、明らかにしていく意義が⼤きいと考えています。

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https://research-er.jp/articles/view/78566
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