不動産や絵画、ワインなど世界には様々なマーケットが存在している。各マーケットでの評価指標も、グローバル化に伴い概ね世界で共通化している。不動産に限らず、これら商品のキャピタルゲインに着目する、一定の投資マーケットが存在する。
その一方で、日本特有のガラパゴス市場も少なくない。日本刀の世界がその一つ。刀剣女子なる言葉も聞かれるようになった。不動産から離れるが刀市場の動向を探ってみた。

日本美術刀剣保存協会では、国が指定又は認定する重要文化財・重要美術品ではない刀の価値を4つのランクに分けて評価している。評価の高い順から、@特別重要刀剣A重要刀剣B特別保存刀剣C保存刀剣――となる。日本刀の市場価格も当然この順番となり、特別重要刀剣というのは、重要文化財や重要美術品と同等の刀≠ニ評価できるとする。

2020年6月に刀剣博物館「名古屋刀剣ワールド」を開業予定の東建コーポレーションでは、「重要文化財などの場合、価格相場は数千万円後半、7000万〜9000万円位の感じだ。当社では重要文化財を所蔵しており、その中には豊臣秀吉から前田利家に渡ったとの逸話が残る大坂長義(作者名)の短刀がある。
こうした由来のある刀はそれほど多くはない。織田信長の父親の信秀が持っていた日本刀であったり、石田三成から江戸前期の武将である佐竹義宣に渡ったとされる薙刀も所有する。来年の刀剣博物館の開業に向け、国宝級を含めて所蔵をさらに増やす予定」と説明する。

特別重要刀剣・重要美術品は、その来歴によって値幅があるものの、1000万円以上からが相場になるという。同ランクの日本刀であっても、例えば人気作者の正宗の刀だと値段が高い。人気の作者は、大坂長義や正宗のほか、正宗の弟子の定宗、村正などがある。

現代作家による日本刀を好む女性ファンも増えた。現代作家のメリットは、オーダーメイドで日本刀を作ってもらえるところ。価格は200万〜300万円が相場であるが、オーダーした日本刀もいったん人の手に渡って市場に出回ったりすると、人気作家の日本刀であっても100万円を切り、80万円ほどで取り引きされるケースが少なくない。

全国刀剣商業組合は、新橋の東京美術倶楽部で毎年11月に「大刀剣市」を開催している。昨年も11月16〜18日に開催して全国各地から73店舗が出店。日本最大の展示即売会となっており、全国からマニアが来場する。ただ、日本刀の市場は、骨董品マーケットのような掘り出し物がほぼないというのが業界の共通認識である。

市場評価が高まり、購入時より値上がりするのは稀ということだ。良い刀には既にそれなりの値段・評価が付いているためである。また、どういった刀が誰のところで所蔵されているか、同業者は把握している。仮に、相場から逸脱した価格で売り出したりすると、「あの事業者は……」と悪評が立ちやすい。業者間に価格の監視機能が働いているのが市場特性となっている。したがって、掘り出し物を見つけるのは難しい。

江戸時代の刀は重く室町時代は軽い。ある所有者は、「これは使われ方に理由がある。江戸時代は戦で使われることがなくなり、剣術として両手でしっかり持って振るガッシリしたタイプが目立つ。その一方で戦国時代の刀は戦での使い勝手を考えて軽く作られているからだ」とする。馬に乗って使う太刀(薙刀)の場合は、片手で手綱さばきしなければならないため、片手で使える軽さでリーチも長くグリップは細身で持ちやすいのが特徴。

しかし、そう簡単に刀を買って持って帰ることができるのか。銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)に引っかからないかが気になるところだが、刀を買ったり、所持することについて免許等を取得する必要はない。

外国人からの人気も高い。国が指定した重要文化財や重要美術品の刀は、日本国外への持ち出しはできないが、それ以外のランクであれば特に制限はない。日本刀は、一般的な資産運用商品のように、キャピタルゲインを見込んで購入するというよりも、趣味として、鑑賞用としての需要が強い。日本特有の文化である。外国にも、歴史を遡れば戦いに使用した独自の剣はあるが、日本のように刀を神聖化して受け継ぎ、マーケットとして人気になっているのは珍しい。

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猪木の注進
数年前までは2尺ちょっとのなまくら刀は10万以下で買えてました。
それがいまじゃ偽銘の脇差にまで数十万の値がつく始末
日本刀は目利きができるようになってから買いましょう