強制加入や活動の負担が問題視されているPTAについて、兵庫県川西市が改善を議論する検討会を設けます。親と教員がつくる団体であるPTAの運営方法に、行政が関わるケースは異例です。「保護者の負担軽減」を公約に掲げた越田謙治郎市長(41)に、検討会のねらいやPTAの課題などを聞きました。(聞き手・田中聡子)

 ――なぜマニフェストに「PTA」を入れたのですか。

 マニフェストを固めるために子育て世代の人と話していた時、「PTAをなんとかしてほしい」「大変だ」という声がたくさんあったんです。「役員が決まらないと帰れない」「役員になれない理由をみんなの前で発表しないといけない」など、多くの人が不満を抱え、「しんどい」「変えたい」と思いながらやっている。

 今は自営業者や専業主婦が多かった時代と異なり、少子化により保護者の数も減っています。なのに、PTAは基本的に同じことを続けている。「いらない」と思っている活動でも、「変えよう」と提案すると「自分でやれ」と言われかねない。「それなら1年間我慢しよう」となり、いつまでも変わらない。ならば、長期的に取り組める行政がなんとかする必要があると考えました。

 妊娠中の産科医不足から始まり、待機児童問題、学校給食と、人が直面する子育ての関心事は子どもの育ちに従って変化しますが、どの段階でも課題になるのがPTAです。幼稚園や保育園の保護者会から中学、高校までずっとかかわり続けることもある大きな問題。しかし、政治は「学校と別組織」という理由で放置してきたのです。

 ――「検討会」という方法を選んだのは?

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 ――批判もあるのでは。

 「市長がPTAをつぶそうとしている」という声もあるそうです。PTAが「よき思い出」の人には、「自分がしてきたことを市長が否定している」と思うのでしょう。もちろん過去の全否定ではありません。過去と同じように活動できなくなっているのに、同じことが求められているのを問題にしているだけです。

 議会でも、「まずは市のPTAの連合組織が取り組むべきでは」という意見がありました。確かに連合組織も改革を推進しており、協力は不可欠です。でも、PTA会長をくじ引きで決める例があるような現状では、改革に長期的に取り組むのは難しいでしょう。

 ――PTAをめぐる意見は多様です。検討会のメンバーや問題設定が大切では。

 「今のままで問題ない」という人では困ります。逆に「PTAは壊しちゃえ」という極論も受け入れられないでしょう。両極端ではなく、現状に対して「なんかせなあかん」と問題意識を持ってくれている人にお願いしたい。PTA会長や役員経験者の方、学校の先生や研究者の方なんかを考えています。

 地域の団体の方にも入っていただきたい。実情を分かってもらわないといけない。地域のみなさんが学校や子どもたちに協力してくれているのは間違いありませんが、かといって、例えば、地域の行事のたびにPTAに「人を出して」というのはなかなか難しい。地域の方も「俺たちもやってるんだから、PTAもやれ」というわけではないでしょう。長年の役割分担を踏襲しているだけなのでしょう。地域社会も高齢化など人手不足で、これまでのやり方を変えることはとても大変なんです。

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 ――役員免除のために病気や家族の事情を公表させられたり、退会したら仲間はずれにされたりする例もあるといいます。個人を救済する方法は考えていますか。

 それは課題です。最低限守ってほしいことや、やめてほしいことのガイドラインは必要でしょう。法律上、人権上おかしな問題は放置してはいけない。まず、任意の組織だということだけは守ってほしいので、早い段階で市から学校に示します。会費を徴収する組織なのに「気づいたら勝手に会員になっていた」というのは許されません。学校の名簿が自動的にPTAに渡っているのも問題です。

 「役員をやりたくないなら理由を言え。言わないなら役員だ」というのも、民主主義社会であり得ない。「理由」も昔は「仕事」ぐらいでよかったのが、いまは働く人が多いから、介護や病気といったプライバシーをさらけ出さないといけない。

 よく話に聞く「非会員の子どもを排除する」なんて、本当に子どものための組織なのでしょうか。その理屈でいうと、受益が全くない学校の先生が会費を払うことが、全く理にかなわなくなります。

4/4(木) 8:02
朝日新聞デジタル
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