https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201904/CK2019040402000309.html

ゴーン前会長、4回目逮捕 保釈中異例 検察に説明責任
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2019年4月4日 夕刊

東京地検特捜部が、保釈中のゴーン容疑者を再逮捕するという異例の手段に踏み切ったのは、「カリスマ経営者」にまつわる会社私物化疑惑の中でも、オマーンの友人側を介したとされる私的流用額が巨額で、見過ごすことはできないと考えたからだ。

 特捜部は一月、サウジアラビア人の実業家に十二億円余りを流出させたとする特別背任罪でゴーン容疑者を起訴した。原資となったのは、ゴーン容疑者が自由に使えた予備資金だった。
 捜査の過程では、予備資金が他の中東諸国にもばらまかれていた疑いが浮上したが、舞台は日本と縁の深くない国々。証拠が十分に集められないまま保釈となり、「関係者と口裏合わせをされる恐れがある。もう立件は厳しい」と諦めを口にする検察幹部もいた。

 特捜部は特に巨額が動いた「オマーンルート」の捜査を水面下で続けたが、資金は中東の複数国の間を流れ、入金と使途を「完全にひもづけるのは難しい」(別の幹部)状況。上級庁には慎重な姿勢が見られた。

 しかし特捜部は日産関係者らの事情聴取を重ね、日産の協力を得て支払い記録などの物証も精査。国内中心の捜査でも、オマーンの友人側の業務実態と支払い名目に大きな隔たりがあったことは立証できるとして、立件にこぎ着けた。

 ただ、ゴーン容疑者を巡っては海外メディアを中心に、否認をすれば長期勾留につながるという「人質司法」の問題が批判されてきた。検察幹部の中には「在宅のまま追起訴という選択肢もある」との声もあったが、なぜ逮捕の必要性があったのか。検察当局は国内外に説明する責任がある。 (池田悌一、小野沢健太)