◆幻想のメディア SNSの民主主義(23)第2部 配信の仕組み

 〈沖縄2紙が報じないニュース〉

 2017年12月上旬、「産経新聞」のホームページ(HP)で、こんなタイトルとともにある記事が紹介された。

 記事は、同年12月1日、沖縄自動車道で発生した車6台が絡む事故の報道を巡り、横転した車両の運転手を米海兵隊の曹長が救助したとして、沖縄の地元紙2紙がそれを報じなかったことを〈報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ〉と批判する内容だった。

 記事はその後、全国のメディアが発信するニュースを紹介するヤフーの「ヤフーニュース」でも配信された。二つの大きなサイトで紹介されたことで、SNS上であっという間に広がった。

 だが後に、この曹長は横転した運転手の救助には当たっていなかったことが判明する。産経新聞はHPの記事を削除しおわびを掲載。読者と地元紙2紙に謝罪した。

 同紙の井口文彦東京編集局長は「事実を突き詰めることをおろそかにし、記事という商品にしてしまった。大きな過ちだった」と振り返る。あくまで個人的な見解と前置きしつつ、記事の中で地元2紙を厳しく批判した言葉については「(ネットでは)はっきり物を言うことがPV(ページビュー=閲覧数)につながる。そういうことに影響を受けていた部分があったのではないか」とみる。

 現在、同紙は一連の問題を反省材料として、研修や会議の場で新人記者や管理職に、報道の際の事実確認の徹底を意識付けているという。

 井口編集局長は「仮に曹長が救助活動をしていたとしても、地元2紙を批判した言葉は表現や節度を踏み越えていた」とし、「ファクト(事実)に基づいた批評が基本だ。今回の問題を受け、批判するなら知的に批判するべきだったとわれわれとしては大きく反省している」と語った。

 〈事実関係に間違いのある記事を提供したことを重く受け止めておわびするとともに、以下ご報告いたします〉

 同じ記事を配信したヤフーが自社メディア「news HACK」でおわびと訂正を発表したのは、産経新聞の謝罪の約1カ月後のことだ。同紙から配信された記事に「日本人救出で重体 米兵に祈り」という見出しを付けてヤフーニュースのトピックスに出し、多くの人が目にするトップページに掲載した経緯を説明。〈見出しには事実として確認できない内容が含まれていました〉と報告した。(「幻想のメディア」取材班)

沖縄タイムス 4/6(土) 21:40
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190406-00402136-okinawat-oki