※週末の政治

認定を受けた候補者の中には、このマークをポスターやチラシに付ける人も
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■薔薇マークキャンペーンとは何か

 2019年1月、統一地方選挙と参議院選挙に向け、「薔薇マークキャンペーン」と題する選挙キャンペーンを立ち上げました。これから行われる選挙の候補者に、「反緊縮・財政出動の経済政策 」を掲げるよう呼びかけるとともに、賛同してくれた候補者には政党を問わず「薔薇マーク」を認定。有権者が投票する際の参考にしてもらおうというものです。

 研究者を中心に24名(発足時は22名)以上に呼びかけ人に加わっていただき、2月に東京で、3月に大阪でキックオフ記者会見を開催。いくつかのメディアが取り上げてくれたこともあって、思った以上の反響がありました。自薦・他薦を問わず申請をいただいた予定候補者の中から、キャンペーンの認定基準に照らして審査を行い、4月8日時点で55名が「薔薇マーク」認定立候補者(予定も含む)となっています。

「薔薇マーク」認定の基準は、おおむね以下の内容を満たす経済政策を掲げていることです。

1. 消費税の10%増税凍結。(むしろ景気対策として5%に減税することを掲げるのが望ましい。ただしこれは認定条件ではない)

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 一言で言うならば、消費税増税ではなく大企業や富裕層に応分の負担を課す一方、教育や福祉、介護など生活に直結する分野に、直ちに大胆に公金を投入して人々の生活を底上げしていくというものです(詳しくは、薔薇マークキャンペーンのホームページ などをご覧ください)。こうした「反緊縮・財政出動」経済政策の方向性は今、ヨーロッパ左派の間で急速に広がっています。

■「アベノミクス」に対抗できる経済政策を

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 しかし当初、安倍政権に批判的な、いわゆる「左派」の人たちの見解は、ほとんどが「アベノミクスなんて1〜2年で破綻する」というもの。安倍政権の経済政策による一定の効果が、政権を支持する世論をもたらす――このような仕組みを分析して、野党側の作戦として「対抗できる経済政策をつくるべき」とする私の主張は、「アベノミクスを肯定するものだ」との批判も受けました。

 私は、安倍政権の経済政策をすべて評価しているわけではありません。金融緩和は確かにある程度進んだかもしれませんが、それを効果的に生産物やサービスへの需要に回すために必要な財政出動は十分ではなく、社会福祉や教育など、人々の生活を支える分野への公的支出はむしろ大幅に削減されました。人々の生活がとてもよくなった、暮らしやすくなったとは言えない状況だと思います。

 ただ、それでも安倍政権下で若干でも景気が上向きになり、非正規雇用が多いとはいえ失業者が減ったことは事実です。だからこそ、多くの人が与党に票を投じたし、安保法制や特定秘密保護法の強行採決、森友・加計問題などのさまざまな疑惑がありながらも、政権が一定の支持率を保ち続けているのではないでしょうか。

 そうした状況を変えていくには、安倍政権に批判的な人たちこそが、もっと魅力のある経済政策を示さなくてはならない。人々の生活そのものを底上げする「反緊縮・財政出動」政策こそ、アベノミクスに対抗する「もう一つの選択肢」になり得るはずだ──。私はそう考えてきたのです。

■あきらめが広がる中に、「もう一つの選択肢」を示す

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 財政再建論が根強い中、「もっと公的支出を拡大すべきだ」という私たちのような主張を、政党が全体として掲げるのは難しいでしょう。しかし、候補者個人としては、共感してくれる人もかなり多いと感じています。このキャンペーンは、そうした候補者を「可視化」するためのもの。今、日本には「政治志向的にはリベラルだけど、経済政策は重視したい」という人への受け皿になる政党、政治勢力がない。しかし政治家個人でその選択肢を可視化できれば、安倍自民党一強に歯止めをかける一助になるのではないか。ひょっとしたらいずれは、アメリカにおける「サンダース派 」のようなものの形成につながっていくかもしれないと思います。(続きはソース)

松尾匡(立命館大学経済学部教授)

imidas 2019/04/12
https://imidas.jp/jijikaitai/c-40-119-19-04-g646