巨大な牛の造形物に映写されるプロジェクションマッピング=兵庫県新温泉町丹土の県立但馬牧場公園で、谷田朋美撮影
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生まれたばかりの但馬牛の赤ちゃん=兵庫県新温泉町丹土の県立但馬牧場公園で、谷田朋美撮影
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 神戸ビーフなど高級ブランド牛の素牛(もとうし)・「但馬牛」の産地、兵庫県但馬地方。「県立但馬牧場公園」(新温泉町)は、生産振興の拠点として1994年に開設されて以来、但馬牛の魅力を発信してきた。昨年、併設の但馬牛博物館をリニューアル。今月には4頭の牛の赤ちゃんが誕生したと聞き、訪ねた。【谷田朋美】

 同園は、約120ヘクタールの敷地に、但馬牛を飼育する大動物舎、羊やヤギ、ウサギを飼育する小動物舎、博物館などが点在する。藤本喜龍園長や渡辺大直博物館館長らの案内でまずは博物館に向かった。

 同館に入ると、体長4・7メートルの巨大な但馬牛の造形物が目に飛び込んできた。全国の黒毛和牛種の改良に貢献した名牛「田尻号」がモデルとか。但馬牛に関する基礎知識を学べるプロジェクションマッピングが映写できる仕掛けになっている。

 人間と牛の関わりや但馬牛の歴史を紹介した展示が興味深い。「牛は5世紀前後に渡来人が連れてきたとされる」と渡辺館長。鎌倉時代に描かれた「国牛十図」(複製)には「資質や品位にすぐれ……」とあり、古くから但馬牛が高く評価されていたことが分かる。

 現在の但馬牛の主流となる系統は、江戸時代に地元の畜産農家が良い牛を集めてつくったものがもとになっているという。「明治以降、こうした系統を維持するための血統の管理がはじまった」。県が全国に先駆けて整備したとされる牛の戸籍「牛籍簿」もそのひとつ。展示された現物の詳細な記述を見れば、血統への並々ならぬこだわりが伝わってくる。渡辺館長は「昭和初期に全国の和牛が黒毛和種となり、他地域で純血種がいなくなっても、但馬牛は県外種と交配せず血統を維持してきた」と胸を張る。

 次は大動物舎へ。飼育する但馬牛約20頭のうち4頭は今月生まれたばかり。藤本園長は「ベビーラッシュなんです」とうれしそう。ちょうどスタッフが餌をやっている最中で、成牛は食べるのに夢中だ。興味津々の様子で首をのばしてきたのは今年1月に生まれた子牛。頭をなでてやると、気持ち良さそうにのびをした。藤本園長は「実際に見て触れることで但馬牛を身近に感じてもらいたい」と話す。

 ゴールデンウイークにはパンケーキづくり教室(28日)や羊の毛刈り体験(29日と5月2、4、5日)などイベントが目白押し。藤本園長は「ぜひ高原の動物に会いに来て」と力を込めた。

【情報】

 兵庫県新温泉町丹土1033。北近畿豊岡自動車道の八鹿氷ノ山インターから約50分。9〜17時。木曜定休。入園料無料。園内の愛宕山は夏は但馬牛の放牧地、冬はスキー場に。大動物舎、小動物舎、小動物と遊べるふれあい広場への入場は事前の申し込みが必要。(当日予約可)。

毎日新聞 2019年4月26日
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